魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

バラフエダイ

2023年11月17日 12時08分48秒 | 魚紹介

もう11月も後半になってしまいました。

今年の海は肉食性の死滅回遊魚(死滅しないものもいるが・・・)が多かった。とくに目立つのはハタ科の種類の多さで、潜っていてもいつもはなかなか見かけないアカハタを多く見ることができたが、フエダイ科の魚も非常に多く見られた(それゆえいつもは非常に多いソラスズメダイも少なかった)。

夕方にハタなどを狙ってキビナゴを餌に釣りをすると、なかなか強い引きがあった。大きなユカタハタかそのあたりか、と思いきや、釣れてきたのはフエダイ科・フエダイ属のバラフエダイ。バラフエダイは全長1mくらいになり、国産フエダイ属の中では最大級の種類である。バラフエダイの幼魚はヒメフエダイなどとともに死滅回遊魚として日本の太平洋域で見られるがその数は少なく、私も2007年に釣って以来久しぶりの出会いとなった。

フエダイ類はなかなか強い歯をもつがバラフエダイはその歯が目立っている。図鑑などに掲載されているバラフエダイなどは、口を閉じていてもその白い歯をのぞかせている。この歯で魚類を咥えて捕食する。キビナゴなどはひとたまりもない。そしてかなり引きも強いため、仕掛け(ジグサビキ)もこんがらかってしまう。フエダイの仲間はよくフエフキダイ科・フエフキダイ属の魚と混同されるが頬に鱗がないためフエフキダイ属の魚とは見分けることができる(ただしフエフキダイ科の魚でもメイチダイ亜科の魚は頬に鱗があるので注意)。

水中でのバラフエダイ。これはこのバラフエダイを釣った日の朝に撮影したもの。下の魚がバラフエダイである。バラフエダイは灰色っぽい体で、尾の付け根付近に白い目立つ点があり、尾鰭は透明で上・下に黒い線が入る。これはある種の魚の特徴をまねたものである。

それがスズメダイである。この手のスズメダイの仲間では写真の種標準和名スズメダイのほか、オキナワスズメダイやタイワンスズメダイなどが白い点や黒い線を持っておりそれらに擬態しているものと考えられる。このほか、比Fishbaseの写真では体の前半が黒く後半が白いというフィジー産の個体が掲載されているがこれはシコクスズメダイなどに似せているのであろう。そして仲間と見せかけてそのスズメダイはやがてバラフエダイの餌になってしまうのだという。

なお、バラフエダイのさきほどの写真の上に写っている魚はヒメフエダイである。ヒメフエダイはより小さい個体は体色が青っぽくて尾も黄色みをおびる。これはこのあたりにたくさんいるソラスズメダイに擬態していると思っているのだが、どうだろうか。このヒメフエダイも今年はたくさん見られた。小さなソラスズメダイたちにとっては受難の夏となってしまったのかもしれない。

バラフエダイは大型になり市場価値も高そうに見えるが、大きいものはシガテラ毒をもつことが多く、沖縄でもあまり市場にはあがっていない。幼魚は「フタツボシドクギョ」成魚は「アカドクタルミ」などと、地方名に「毒」の文字が入ることが多い。今回はリリースしたが、幼魚の毒性はどうだったのだろうか。まあ成魚ほど強くはないと思われるが。

水族館では大型魚を飼育している水槽に入っているところがよく見られるが、やはり肉食性が強いため小魚は食されてしまうだろう。分布域は広く、駿河湾から琉球列島にまで分布しているが、基本的には先述したように熱帯域が分布の中心であるため、駿河湾では越冬していないものと思われる。海外では東アフリカ、紅海~マルケサス諸島までのインドー太平洋域に生息する(ハワイ諸島にはいない)。


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