最近は「深海魚ブーム」であるけれど、ヤセムツの仲間は深海魚ファンにはあまりなじみがないようなのだ。きっとこの仲間は体があまり「特徴的」ではなく、似たようなのが浅い海にもいるせいだろうか。ヤセムツの仲間は日本近海に3属6種が分布しているが、数が多いのはヤセムツとハゲヤセムツの2種。写真の個体はハゲヤセムツ。
ヤセムツの仲間はテンジクダイに近縁と考えられていて、古い本では本種をテンジクダイ科に含めているものもあるほど。ハゲヤセムツは水深100~800mくらいの場所を群れで遊泳していて、釣りや底曳網漁業などで漁獲される種類。鱗はとても剥げやすく、今回の個体には少ししか残っていなかった。
こちらは眼がやや大きいのだが、上のハゲヤセムツと同じ種類と考えられるもの。ほかのヤセムツ科魚類は主鰓蓋骨に強大な棘があるのが特徴とされているが、今回の個体にはそれがない。したがってハゲヤセムツと同定できる。
なおハゲヤセムツと出会ったのは今回が2回目。2009年に沖合底曳網漁業で漁獲されたのですが、残念ながらぶろぐには掲載していませんでした。今回改めてご紹介。この個体は鱗が全くないだけでなく、鰭もぼろぼろ。第1背鰭に至っては基部しか残っていない様子。
ヤセムツの仲間は多くが全長20cmほどと小型であり、あまり市場で見た記憶がない。近縁といわれるテンジクダイの仲間も、テンジクダイなど一部の種をのぞいてあまり市場には出回らない。ただしハゲヤセムツは静岡など一部の地域ではスーパーでも販売されているらしく、それなりに認知されているようだ。一番でかいオオヤセムツという種類は大きいもので全長70cmになるといわれ、食用魚として日本に輸入されたことがあるそうだ。このオオヤセムツは大西洋の広域と、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドに分布している。一方のハゲヤセムツも分布は広く、駿河湾以南の太平洋岸、大西洋、地中海、インド洋のレユニオン島、オーストラリア、ニュージーランドに分布。
この間のヒウチダイと同じく、この魚を食した話はまた後程。
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