魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

スジイシモチとミスジテンジクダイ

2023年01月06日 23時17分43秒 | 魚の見分け方

さて、お久しぶりの「魚の見分け方」。今回はスジイシモチとミスジテンジクダイ。というのも、この2種は混同されていることが多く、難しい魚なのである。オオスジイシモチとコスジイシモチの違いはまだわかる、という方も多いと思われるが、スジイシモチとミスジテンジクダイは2000年代でもなお混同されがちであった。某サイトにかかわった当時でも、私たちが当時スジイシモチとしていたものを、みんなで写真を見ながら、ミスジテンジクダイに同定しなおしたりした。なお、私がこの魚の見分け方を述べるのはこれが最初ではない。以前作っていた某海水魚飼育系サイト(某が多い、申し訳ない)でも体側に縦帯があるテンジクダイの見分け方、と称する記事を作成していたりするので、既視感があるかもしれない。

まずはスジイシモチ。2011年に浅い潮だまりで採集してきた個体。どっしりとした風格がある魚である。

スジイシモチの体側の縦帯は体側に5本ある。なお()の中の数字は、背鰭直下のものを1本目としたときの数字である。このスジイシモチは胸鰭が邪魔をしてしまっているので、第5(6)番目の縦帯がよく見えない。

一方こちらはミスジテンジクダイ。これは2017年に採集してきたものだが、水槽で飼育しているうちに大きくなった。

ミスジテンジクダイも体側に5(6)本の縦帯がある。この縦帯の()内の説明はスジイシモチと同様なので省略。

スジイシモチの第2縦帯(矢印)

ミスジテンジクダイの第2縦帯(矢印)

ただし、第2縦帯が異なっている。スジイシモチの第2縦帯は鰓蓋よりも後方に達するのに対し、ミスジテンジクダイのそれは鰓蓋基部付近までにしかないのが特徴である。写真の個体もそうだが、ほとんど第2縦帯が目立たないのである。またスジイシモチはミスジテンジクダイよりも丸い顔をしている、と神奈川県生命の星・地球博物館の瀬能 宏博士からお教えいただいたことがある。たしかに、スジイシモチよりもミスジテンジクダイのほうがとんがった顔つきである。

スジイシモチの尾柄

ミスジテンジクダイの尾柄

尾部については、スジイシモチには目立つ円形斑があるが、ミスジテンジクダイではこれが細長い斑、というか縦帯が濃く不自然に膨らんでいるような感じである。また海中でみたら、この部分もほかの線と一体化し、帯の黒いキンセンイシモチのように見えることがある。ただミスジテンジクダイでも、スジイシモチのように丸くなっていることがあるので、そこは体側の縦線と頭部の丸みなどで見分けるとよいだろう。

スジイシモチとミスジテンジクダイはともにインドー西太平洋、とくに後者はインドー中央太平洋にまで広く分布している(ハワイ諸島など、分布していない地域がある)。ミスジテンジクダイは北は千葉県の館山湾、南は沖縄・小笠原諸島、南鳥島にまで分布している。生息環境も浅い磯に生息しており、高知県のタイドプールではまだ半透明な幼魚から成魚に近いサイズまで見ることができる。一方スジイシモチも千葉県以南の太平洋岸にいるとされるが、こちらはまだ九州以北では少なくとも私は見ていない。ミスジテンジクダイの誤認の可能性もあったが、おそらく私が見ていないだけだと思われる。琉球列島のタイドプールではごく普通にみられる種で、夜磯ではお馴染みの魚である。

なお、ミスジテンジクダイ、と呼ばれているものについては2タイプある。ひとつは体側中央にある縦帯が尾柄後端まであるタイプ。もうひとつは「L型」と呼ばれ、縦帯が尾柄後端をこえ、尾鰭後方にまで延長するというものである。今回は残念ながら、ミスジテンジクダイL型については掲載できなかった。別種かもしれないが、Kuiter and Kozawaのテンジクダイ図鑑(Cardinalfishes of the World)でもとくに別種扱いはされていない模様。このテンジクダイ図鑑はPDF版は無料DLが可能ということでうれしい。

飼育についてはさほど難しくはないが、ほかのテンジクダイとの混泳の際は、ミスジテンジクダイがほかのテンジクダイをいじめていないか、逆にほかのテンジクダイからいじめられていないかチェックしたい。また気が強いスズメダイの仲間との飼育もおすすめできない。口に入らない魚であれば多くの種と混泳できるだろう。もちろんサンゴとの相性もよい。

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