ご無沙汰です。私は最近アカマツカサ属の同定依頼に遭遇することが多い。大体が紀伊半島から九州、沖縄で採集されたアカマツカサ属の魚の同定である。最近「九州以北に生息するアカマツカサ属=ナミマツカサ」とするような同定が非常に多くある。しかしながら、九州以北のアカマツカサ属は「魚類検索」のものだけでも8種がいるとされる。したがって、九州以北のアカマツカサ属をナミマツカサのみとするのは誤解を招く可能性がある。
アカマツカサ属の同定は胸鰭腋部の鱗の有無を見ることが多い。ここに鱗があるか、ないかで大きく二分される。前者にはナミマツカサ、アカマツカサ、セグロマツカサなどがおり、後者にはウロコマツカサやツマリマツカサなどが含まれる。
鱗、といえば体側の鱗の数もアカマツカサ属の同定においては重要視される。側線有孔鱗数は32~43のものと、27~30のものという二つのグループに大きく分けられる。「魚類検索」では前者にはベニマツカサ、キビレマツカサ、クロオビマツカサ、ミナミマツカサ、コガネマツカサ、アメマツカサに並んでツマリマツカサが含まれているが、ツマリマツカサは側線有孔鱗数28~29なので同定には注意が必要である。
ほかナミマツカサとアカマツカサ、ヨゴレマツカサの同定であれば頭長、吻長、鰓耙数、両眼間隔の計測なども必要である。ナミマツカサの頭長は両眼間隔の3.8~4.5倍、吻長の4.9~5.3倍であるが、ヨゴレマツカサではそれぞれ4.5~5.1倍、4.6~4.9倍である。また、鰓耙数はナミマツカサでは36以下、ヨゴレマツカサでは38~43、アカマツカサでは36~44で、アカマツカサとヨゴレマツカサでは数値がカブるが、ナミマツカサでは明らかに少ない。
ただこれらの魚の同定を行うのはある程度経験と適切な参考資料(例:日本産魚類検索第三版 など)が必要となる。それを考えるとやはり素人同定でアカマツカサ属の同定は困難であり、魚類相を調べるなど、正確に同定する必要があるのならば写真だけでなく個体を残しておく必要があろう。
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