魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

イヌゴチ

2016年12月13日 00時26分14秒 | 魚紹介

北海道の魚シリーズ。まだまだ続きます。スズキ目・カジカ亜目・トクビレ科・イヌゴチ属のイヌゴチ。以前ご紹介したカサゴ亜目のイネゴチとは一字違いの大違い。

イヌゴチはトクビレ科の中でも特に格好いいといえる。トクビレの雄の長い背鰭・臀鰭も格好いいし、ツノシャチウオ属もまた格好いい。サイトクビレなど鎧をまとった新型兵器のようにしか見えない。一方イヌゴチはどこか爬虫類のようにも見える。正面から見た様子は遠い昔に死に絶えた曲竜の仲間である、アンキロサウルスなどのようにも見えるのだ。

イヌゴチの横顔は曲竜類よりもトカゲとかカメレオンとか、そんな類のようにも見える。口は前方についていて、腹面にあるトクビレ属魚類や、テングトクビレなどと見分けるおとができる。また、下顎が上顎よりも前方に出ないことで、以前にこのぶろぐでもご紹介したシチロウウオやサブロウ属、オニシャチウオ属の魚と区別することができる。

イヌゴチ属は1属2種が知られ、いずれも日本に分布している。イヌゴチは北方に生息する種で、島根県・岩手県以北の日本、サハリン、カムチャッカを経てアラスカ湾までの北太平洋、朝鮮半島の日本海岸にまで分布。一方この属のもう1種トンボイヌゴチはやや南方系の種。南日本の太平洋岸に分布し、土佐湾でも漁獲されている。四国でも運が良ければトクビレの仲間に出会えるチャンスがあるのだ。

さて、このイヌゴチを料理してみた。イヌゴチが含まれるトクビレ科の代表種であるトクビレは軍艦焼きと呼ばれる料理法で知られる。腹の中には味噌や野菜を詰めて焼いて食べるのだという。我が家では味噌味の焼き物はあまり人気がないので塩焼きで。肝ももちろんのっけて。軍艦焼きについて知りたい人はクックパッドにも掲載されており、興味がある方は調べてみるとよいだろう。

完成~!小さいほうの身にのっている肝臓はイヌゴチのものではなくケムシカジカの肝臓。なお、このイヌゴチは雌で卵を持っていたが、卵は煮てたべた。塩焼きは温かいうちに食べないと硬くなってしまう。焼きたての身は美味であった。なおイヌゴチの塩焼きの右上方にも何やら魚の塩焼きがうつっているのだが、その魚の紹介はまた後日。

今回のイヌゴチも坂口太一さんからのいただきものでした。ありがとうございました。

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メガネカスベ

2016年12月12日 11時18分47秒 | 魚紹介

先月も「モヨウカスベ」を食したばかりの私。

しかしまた新たなガンギエイ科魚類と巡り合うことになった。それが今回のガンギエイ目・ガンギエイ科・Beringraja属のメガネカスベ。

メガネカスベはその種標準和名こそよく聞くエイであったが、意外なほどWEBの画像が少ない。以前私は別のガンギエイ科魚類をメガネカスベと思い込んできたが、ここでようやく本物のメガネカスベと出会うことができた。

今回は全長45cmほど。しかし交接器があり、雄と考えられる。大きいものは全長1mに達するともいわれ、ガンギエイの中でもゾウカスベやテングカスベに次ぐ大型種といえるようだ。以前愛媛県のスーパーで北海道産の巨大なエイ鰭を発見し、これが何の鰭かわからなあったが、メガネカスベが1mを超える巨大な種であると知り、納得。

 

腹面は以前紹介したモヨウカスベほどロレンチニ瓶があるように見えない。

しかし口や鰓の周辺にはびっしり。ちなみに口の上のほうにある1対の穴のようなものは鼻孔であり、眼ではない。ロレンチニ瓶もここに集中させて効率を高めようとしているのか。

雄のメガネカスベの尾。雄の尾背面には1列の棘がならんでいる。雌では複数列の棘があるようだが、いずれにせよコモンカスベのようなとげとげした感じもない。棘はアカエイやトビエイのような毒棘ではなく、触れてもそれほど痛みがあるようなものではないが、うっかり触れてしまうと手を傷つけるおそれがあり、注意が必要である。そしてその棘の後方には小さな背鰭が二つある。そして尾鰭もあるのだが、尾鰭は尾端背面にあり、腹面には尾鰭の隆起がない。

本種は長い間Raja属とされたが、Ishihara et al. (2012)は卵殻の形態や分布パターンの分析をもとにガンギエイ科魚類の整理を行い、本種はBeringraja属に移動された。この属に含まれるのはメガネカスベと、世界最大級のカスベであるBeringraja binoculata(日本には産しない)の2種のみとされる。属の学名の由来はベーリング海のRaja(ガンギエイ科の属)、ということであるが、見た感じでは属の標準和名はついていないようである。さらにソコガンギエイの仲間はガンギエイ科とは別の科に移されているが、こちらの科の学名はついていない。詳しくこれらの件にしりたい方は以下の文献も参照にしてほしい。

Ishihara, H., M. Treloar, P. H. F. Bor, H. Senou & C. H. Jeong, 2012.  The Comparative Morphology of Skate Egg Capsules. (Chondrichthyes: Elasmobranchii: Rajiformes). Bulltein of the Kanagawa Prefectual Museum (Naturea science) No.41: 9-25.

メガネカスベの日本における分布域は、北海道~千葉県銚子までの太平洋岸、日本海岸、東シナ海。北方に多いとされているが、沖縄舟状海盆にもいるようだ。ほかに朝鮮半島、中国、ロシアの日本海沿岸、ピーター大帝湾にもいるらしい。Beringraja binoculataの分布域はベーリング海から北米東岸。

食べ方は前回と同様に唐揚げ。サメやエイは臭いのでは、という人も多い。特にガンギエイ科のエイのいくつかは世界でも有数の臭さを有する「ホンオフェ」の原料になるのだが、ホンオフェは発酵させて腐らせたエイを使用した韓国料理であり、新鮮なガンギエイは臭みもないのである。今回も唐揚げは非常に美味であった、坂口太一さん、ありがとうございました。

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スナガレイ

2016年12月09日 23時36分56秒 | 魚紹介

ナイスなミュージックにのせてかどうかわかりませんが更新予告ですっ、した通り。

カレイ目・カレイ科・ツノガレイ属のスナガレイ。スナガレイは北海道のすべての沿岸に分布するカレイ。北海道だけではなく、日本海側では兵庫県浜坂、太平洋岸では福島県近海まで見ることができるという。海外では朝鮮半島~ロシアの沿海州に分布する。この種は有眼側の模様が「砂」のような色彩であることが多いようだ。黒色や灰色の細かい斑紋が見られる。

しかし最も特徴的なのは無眼側。きわめてよく目立つ黄色線が背鰭や臀鰭に沿うようにして走る。

頭部の形状もかなり変わっている。多くのツノガレイ属魚類では頭部背縁はあまりくぼまないがこの種類は頭部背縁が強くくぼむのが特徴。

同じように頭部背縁が強くくぼむものにはハナガレイという種も知られている。この種は日本では北海道にのみ見られ、しかもオホーツク海に面した網走と紋別くらいでしか見られないようである。スナガレイとの区別方法は有眼側に白っぽい斑点があること、無眼側が一様に黄色である、ということである。

よく「味はよくない」とされているようだが今回唐揚げにしたところ全くそんなことは感じられなかった。ただし、美味しいのだが、小型なため身も薄い。北海道ではよく販売されているほか、釣りでほかのカレイ類とともに釣れるという。

もともと四国や九州での生活が長い私にとっては、カレイの同定というのは結構むずかしいものだったのだ。体の一方に眼が偏っている、奇妙なこの科の魚は33種が知られているものの、四国、特に宇和海沿岸ではほとんどこの仲間は獲れない。かろうじてミギガレイ、ヤナギムシガレイ、メイタガレイ属の2種が漁獲されるくらいであった。

だが最近はいろいろなカレイを購入したり、触ったりすることによってようやくこの仲間のことを理解することができるようになった。今回坂口太一さんからカレイの仲間をいろいろ送っていただき、さらに理解を深められた。ありがとうございました。

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ガンコ

2016年12月08日 16時49分29秒 | 魚紹介

このぶろぐにおいてもっとも多く登場しているタイトル。

スズキ目・カジカ亜目・ウラナイカジカ科・ガンコ属のガンコ。ガンコについては過去2回記事を書いているがその時は標本用であり、食するのは今回が初めてとなる。

ガンコの特徴は後頭部にたくさんの棘があること。この特徴により日本に分布するウラナイカジカ科のほかの多くの種と区別することができる。また体も平べったい。異名アンコウカジカは底からきているのだろう。確かにアンコウと間違えられることもある。アンコウよりも深海性が強く水深800mまで見られるが、それよりも浅い深海に生息することが多い。主な漁法は底曳網や刺し網などである。

ガンコには雌雄で差があるという。魚類検索の分類学的付記によれば、雄の背鰭や臀鰭が雌よりも明らかに長く、従来ヒレナガガンコという名前で呼ばれていたようだ。ほかにもいくつかの名前で記載され学名がついたりしているが、現状ではガンコ属は1属1種とするのが妥当なようだ。今回の個体は雌で鰭は長くのびていない。まだ見ぬ雄はどんな鰭のかたちをしているのか気になる。魚類検索で示されているのがそれだろうか。と思ったが、「日本の海水魚」に雄の写真が掲載されていた。

分布域は意外と広く、日本における分布域は太平洋岸は銚子まで、日本海岸では島根県浜田にまで見ることができるという。私は以前兵庫県近海産のガンコをもらったことがある。2010年に今回同様「ガンコ」のタイトルで記事を書いているのがそれだ。ちなみにこのときは背鰭が1基と紹介しているのだがこれは私のうっかりしたミスで、実際には背鰭は2基である。

さきほども書いたが今回のガンコは雌であった。このように赤い大きな粒の卵が多数入っていた。卵は唐揚げでなく煮つけで食べたが美味しかった。

ガンコのよいところは鱗がないこと。だから鍋にそのまま入れて食することができる。しかし今回は唐揚げにして食べてみた、ウラナイカジカ科の魚は唐揚げにしたらいずれの種も美味しく食べられる。ほかには鍋もおすすめ。皮膚が柔軟で鱗もないことが多く、皮も美味である。この仲間はあまり食用として出回ることがない。魚市場などをのぞいて、運良く入手できるような状況にあれば絶対手にしたい魚だ。

今回坂口さんにおくっていただいた北海道産魚の唐揚げ盛り合わせ。左のほうにカレイの仲間も写っている。次はこのカレイについて書こうか、それともまた別の魚のことを書こうか悩むのだ。

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コオリカジカ

2016年12月07日 14時36分21秒 | 魚紹介

昨日は日記を書く途中で居眠りしてしまい、結局ぶろぐ更新はできませんでした。

今日は北海道の魚。スズキ目・カジカ亜目・カジカ科・コオリカジカ属のコオリカジカ。

コオリカジカ属は北太平洋、北大西洋から17種が知られ、日本にはそのうち11種が知られている。多くの種類で櫛鱗が列状になっているなどの特徴がある。コオリカジカは後頭部に1対の棘があり、さらに体側の背側に小さな棘状の鱗が列をなしている。この二つの特徴の組み合わせによって、日本に分布しているすべてのコオリカジカ属魚類と区別することができる。

体側の背側の棘状の鱗列

後頭部の棘

水深70m以深、やや深い海に生息する種で、漁法は刺網や底曳網。本種もおそらく刺網にかかっていたのだと思われる。日本における分布は、コオリカジカ属としては最も広いものと思われ、北海道の全沿岸から日本海岸では山口県、太平洋岸でも宮城県くらいまでは見られる。海外では朝鮮半島やロシア沿海州まで分布。以前宮城県の底曳網でも本種を見たことはあるが、じっくり見たのは今回が初めてである。カジカの仲間は同定が難しいが、きちんとした標本が残っていればなんてことはないのである。

側線上の強い櫛鱗

今回の個体は北海道の羅臼近海で漁獲されたものだ。ちなみに羅臼産のコオリカジカ属魚類の一種にはその名も「ラウスカジカ」というのがいる。ラウスカジカは体側の背側の鱗列の上方に細かい櫛鱗があり、後頭部には棘がなく皮弁があったりし、後頭部の皮弁は1対であることで近縁種やオットセイカジカと区別することができる。ラウスカジカは2006年に新種記載された種類で、羅臼のほかに太平洋岸の浦河でも漁獲されているらしい。水深73m以浅に生息しているようだが、7cmほどの小型種であり、網にかからず出会う機会はそれほど多くないのかもしれない。

今回のコオリカジカは雄の個体で、大量の卵を持っていた。魚は頭を落とした後三枚おろしにして焼いてたべた。我が家の魚料理にはほとんど頭部がない(笑)。じっくり塩焼きにして食べた、鱗は一見硬くて食べにくそうに思われるがよく焼けば骨も鱗もそのままバリバリと食べられる。身は淡泊であり、味はあまり感じられなかった。

今回のコオリカジカもほかの北海道産の魚と同様坂口太一さんから頂きました。ありがとうございました。

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