第87回全日本フィギュアスケート選手権(2018)、女子フリー(ジャッジスコア)。
<G1>
中塩美悠 西10 SP:50.86(22) FS:96.60(22) 合計:147.46(22)
映画「タイタニック」♪ 振付は鈴木明子。紫。冒頭のトウ・トウ3-3を決めた後はミスもあったが、アクセル・オイラー・サルコウ2-1-2など立て直した。
今季限りで引退ということで、コレオシークエンスでは感極まった表情で滑っていた。もっと笑顔で~~~
永井優香 東3 SP:49.59(24) FS:78.88(24) 合計:128.47(24)
バレエ「シンデレラ」♪ こちらも振付は鈴木明子。ピンクがかった藤色。ルッツ、ループとパンクが続き、きれいに入ったジャンプはダブルアクセルと3回転サルコウくらいだったか。スケーティング自体は優雅なんだけど、、、
キス&クライで大泣き。泣かないで~~~
十倉日和 西11 SP:51.98(19) FS:97.30(21) 合計:149.28(21)
「サラバンド」♪ 振付は織田信成。黒に白レース。織田信成とタッチして登場。ジャンプに高さがあって迫力。フリップやルッツは入らない構成だが、後半サルコウが2回転になったのと、3連続コンビネーションジャンプがなかった以外はほぼ予定通りに跳べた模様。
コンビネーションスピンのとき、リンクサイドで織田コーチ母子が首を振りながら回転数を数えていた。高得点に嬉しそう
三宅咲綺 西5 SP:51.41(20) FS:103.25(19) 合計:154.66(20)
映画「ムーラン・ルージュ」♪ 振付はキャシー・リード。ゴールド。こちらもルッツやフリップがないが、トウ・トウ3-2やループ、後半サルコウやダブルアクセルでまとめた。疾走感のあるコレオは曲に合っていた。
渡辺倫果 J4 SP:50.47(23) FS:111.52(14) 合計:161.99(18)
「眠れる森の美女」♪ 振付はコーチのジョアン・マクラウド&関徳武。紫系の花がいっぱい。冒頭のルッツは少し詰まった着氷になったが、アクセル・トウ・トウ2-3-2、ルッツ・トウ3-2など順調。後半1.1倍になるジャンプがループやサルコウの単独で、得点を稼ぐにはやや物足りない構成かな。
曲が静かになるところのきれいなレイバックスピン、ステップでもう少し勢いがあるといいが、可愛らしさに手拍子が起きた。
籠谷歩未 西9 SP:51.09(21) FS:90.02(23) 合計:141.11(23)
映画「紅の豚」♪ 振付は川越正大。濃いピンク。坂本花織と同じコーチなので、どこか動きが似ている。ルッツ・トウ3-3下りたが回転不足とダウングレード。フリップ・ループ・トウ3-2-2は最後引っ掛かったがこらえた。セカンドにループが跳べるのが強みか。
大きなスパイラルのコレオ、後半フリップの転倒が惜しい。
<G2>
本田真凛 SP:52.75(18) FS:111.48(15) 合計:164.23(15)
映画「LOVERS(十面埋伏)」♪ 振付はローリー・ニコル。ピンク系。柔らかな滑り、指先まで気を配った所作、全体としては美しい。サルコウが2回転になったり、アクセルが1回転になったりとジャンプは完璧ではなかったが、イナバウアーから軽くスライドして入るレイバックスピンなど、魅力は随所にある。
ジャンプが安定するようになれば、またチャンスが増えるはず。
荒木菜那 J2 SP:56.32(16) FS:113.75(13) 合計:170.07(13)
映画「マレフィセント」♪ 振付は宮本賢二。黒系。ルッツ・トウ3-3転倒したが、アクセル・トウ・トウ2-3-2やフリップ・トウ3-2で立て直す。丁寧なステップからそのまま3回転サルコウなど、なかなか見せる構成。
映画を見た人にはその世界観が伝わるのかな?見てないけど
竹野比奈 西2 SP:58.14(14) FS:105.25(18) 合計:163.39(16)
映画「もののけ姫」♪ 振付は鈴木明子。ブルー系。ジャンプに3-3はないが、軽くオーバーターンくらいで大きなミスはなし(回転不足は多少)。スピンが得意だそうで、きちんと姿勢をキープしつつ回転速度が速い。曲調が変わったところでうまく雰囲気を変えていた。
松原星 東1 SP:59.27(13) FS:116.42(11) 合計:175.69(11)
「カプリース」♪ 振付は鈴木明子。ブルー系。浅田真央のエキシビションナンバーを見て決めた曲だそう。3回転ルッツ、サルコウ・トウ3-3など、軸が細くて回転が速いジャンプ。フリップを跳ぼうとして跳びそこなったが、次でリカバリーできた。膝を深く曲げて安定した着氷をする。
表現はまだ少し一本調子で、曲の奔放さを出すにはもう一工夫したいところ。高得点にキス&クライは盛り上がる
本郷理華 SP:55.93(17) FS:107.25(16) 合計:163.18(17)
「ナザレの子」♪ 振付は宮本賢二。ブルーにストーンたくさん。本郷らしい、力強い表現が戻ってきた。トウ・トウ(回転不足)3-3、後半転倒もあったが、かなり頑張る。
スピンの出るところで曲に合わせてためを作ったり、全身を激しく使うステップ、強い曲に負けないコレオ。響いてくる作品。
大庭雅 西4 SP:57.08(15) FS:100.71(20) 合計:157.79(19)
「エデンの東」♪ 振付は安藤美姫。グレー系。動きが洗練されて、表現が豊かになっている。3回転フリップ、サルコウ・トウ3-3など着氷したが、後半少し小さいミスや転倒も出た。雄大なスパイラルのコレオは見せどころ。
安藤美姫が拍手で迎えた。
<G3>
長縄和奏 J6 SP:60.14(11) FS:115.26(12) 合計:175.40(12)
「オペラ座の怪人」♪ 振付はコーチの山田満知子&樋口美穂子。黒と藤色。表情は緊張していたが、体は練習通り動けていた感じ。ルッツ・トウ3-3、終盤アクセル・オイラー・サルコウ2-1-3などジャンプをそろえ、一生懸命振付をこなしていた。
音楽を表現していたかどうかは、、、今後の課題
細田采花 西6 SP:61.41(10) FS:124.33(8) 合計:185.74(8)
映画「サンセット大通り」♪ 振付はキャシー・リード。ゴールド。トリプルアクセル+2回転トウループ、下りた 2本目のトリプルアクセル、決まった その後も3-3やアクセル・トウ2-3と次々 さすがに23歳だけあって、ステップの中での身のこなしや視線の使い方が洗練されている。
終わって顔を覆って喜び、得点を見て嬉しい悲鳴
白岩優奈 SP:59.99(12) FS:123.17(9) 合計:183.16(9)
ムソルグスキー「展覧会の絵」♪ 振付はトム・ディクソン。紫。曲調が何度も変わるが、そのたびに雰囲気をすっと変えてみせる。音と所作、要素をぴしっと合わせていくので、とても気持ちいい。
冒頭のルッツ・トウ3-3で転倒になったが、イーグルからダブルアクセル+3回転トウループにわくわく、最後に3回転ループを決めてフィニッシュ。終わって本人は悔しそう。
青木祐奈 J5 SP:63.72(8) FS:105.56(17) 合計:169.28(14)
グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」♪ 振付は都築奈加子。紫系。ルッツ・ループ3-3に挑んだが3-2で開いてしまった。単独3回転トウループをきれいに下り、アクセル・オイラー・サルコウ2-1-3や、後半3回転ルッツをしっかり決める。
後半少し疲れたか、ステップはややスピードが落ちた。ビールマンスピン頑張ってフィニッシュ。
山下真瑚 SP:62.94(9) FS:134.20(5) 合計:197.14(6)
プッチーニ「蝶々夫人」♪ 振付はコーチの樋口美穂子。ブルー。空を仰いで滑り出し、ルッツ・トウ・トウ3-3-2を鮮やかに決める。ほぼ助走なしでダブルアクセルはイーグルに。アクセル・トウ2-3もきれい。後半回転不足や両足着氷が惜しい。
ゆっくり見せるスパイラル、足の上げ方下ろし方も余韻を持つところがいい。コレオからそのままジャンプにスムーズに入ったり、曲の変わり目をスピンの終わりと合わせたり、引き込まれる作品になっていた。
川畑和愛 J3 SP:64.66(7) FS:118.45(10) 合計:183.11(10)
ガーシュウィン「ピアノ協奏曲ヘ調」♪ 振付は都築奈加子。ピンク。ルッツ・トウ3-3の高さと回転の速さに目を奪われる。後半フリップとルッツの転倒が惜しい しかしアクセル・トウ・ループ2-2-2をしっかり決める。
長身をダイナミックに使うステップやコレオ、ただ教わった通りに動いている感じではなく、センスがありそう。笑顔を浮かべながら滑れているのもいい。
ここまでのジュニア勢でトップ、世界ジュニアに大きく前進
<G4>
横井ゆは菜 J1 SP:66.27(6) FS:130.10(6) 合計:196.37(7)
「オペラ座の怪人」♪ 振付はコーチの川梅みほ。赤白黒。大きなダブルアクセルから、ルッツ・トウ3-2と高さのあるジャンプを続ける。少し着氷が乱れたジャンプもあったが、転倒など大きなミスにはならず。最後にアクセル・トウ・ループ2-2-2を決めたのは大きい。
前半のファントムと中盤以降のクリスティーヌ、しっかり演じ分けた。この調子で世界ジュニア頑張って
紀平梨花 SP:68.75(5) FS:155.01(1) 合計:223.76(2)
「A Beautiful Sorm」♪ 振付はトム・ディクソン。黒系。きりっとした表情で滑り出し、トリプルアクセル+3回転トウループ、決まった さらに単独トリプルアクセルも完璧
他のジャンプも両手上げや片手上げを交えながら次々決めていく。ルッツでステップアウトしたが、+オイラー・サルコウにしてまとめる
ステップも丁寧かつ音とシンクロして、エッジもクリーンでレベル4獲得。スピンの軸がぶれないのは、背景のフェンスが全く動かないのでもよくわかる。最後に3回転サルコウを決めて見事なフィニッシュ。
樋口新葉 SP:72.63(4) FS:125.00(7) 合計:197.63(5)
ヴィヴァルディ「四季」♪ 振付はシェイ=リーン・ボーン。ブルーグレー系。大人っぽい雰囲気になった衣装で、3回転サルコウを決める。ルッツ・トウ3-3転倒、2本目のルッツでステップアウト。3連続ジャンプで2回転トウループが3つ目になってしまった。
今季は怪我があったので、練習が十分にできない時期があったそうだが、ジャンプを下りた瞬間のちょっとした手の動きや仕草など、成熟を感じる。
三原舞依 SP:72.88(3) FS:147.92(3) 合計:220.80(4)
映画「ミッション」より「ガブリエルのオーボエ」♪ 振付はデヴィッド・ウィルソン。薄水色。いつもの、すーっとどこまでも伸びていくスケート。ルッツ・トウ3-3、大きなスパイラルのコレオからの流れでターンから入るダブルアクセル、後半もルッツ・トウ・ループ3-2-2が決まる。ジャンプは全て着氷。
ステップでは会場全体の手拍子をもらいながら、美しいスピンを見せた。高得点に笑顔弾ける
宮原知子 SP:76.76(1) FS:146.58(4) 合計:223.34(3)
「Invierno Porteno(ブエノスアイレスの冬)」♪ 振付はトム・ディクソン。黒、髪に赤い花。一歩たりとも無駄なストロークがない、作り上げられた動き。3回転サルコウ、ルッツ・トウ3-3、ジャンプに高さがある。
スピンの姿勢、終えて出るときの余韻、つなぎの動き、まるで彼女の体が音楽を奏でているよう。ステップはスケートでありながらタンゴ、全身で訴えるコレオ。ジャンプのミスがあっても、この作品の美しさは奪われない。
坂本花織 SP:75.65(2) FS:152.36(2) 合計:228.01(1)
映画「ピアノレッスン」♪ 振付はブノワ・リショー。白から黒のグラデーション。冒頭のフリップ・トウ3-3からジャンプに迷いなく、最後まで高さが落ちない。ダブルアクセルを下りて右手を差し出す所作など、振付を見直しただけあって、洗練されてきた。
スピードに乗ったスケーティングで伸び伸びと、最後の3回転ループを決めると会場は興奮状態。終わると大きなガッツポーズ。
そして得点と順位に、、、驚喜 技術点の高さもさることながら、演技構成点で紀平より上の2番目。見事だった。
結果、坂本花織が初優勝、2位紀平梨花、3位宮原知子。4位三原舞依、5位樋口新葉、山下真瑚が6位まで順位を上げた。
全日本ジュニア女王の横井ゆは菜が7位、トリプルアクセル2本の細田采花が8位、白岩優奈が8位。本田真凛15位、本郷理華17位。
ジュニア勢では川畑和愛の10位が2番手、長縄和奏12位が3番手となるので、世界ジュニアに派遣されそうだ。
見応えのある大会、よかった~~~
全日本と並行してついつい見ちゃったロシア選手権2019、やっと終わった
男子はマキシム・コフトゥンが復活の優勝。副鼻腔炎で直前に入院していたミハイル・コリャダが頑張って2位。アレクサンデル・サマリンが見事なフリーで3位。4位以下にはかなり差をつけた。
ペアはタラソワ/モロゾフが貫禄の優勝、2位ザビアコ/エンベルトと実力通りだが、優雅な「くるみ割り人形」を演じたボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー3位、パヴリウチェンコ/コディキン4位と若手が躍進。会心の演技だった。
アイスダンスはほぼ見てなかったけど、シニツィナ/カツァラポフが優勝、ステパノワ/ブキンが2位。当分この2組のライバル関係が続きそう。
そして世界が注目した女子。優勝がアンナ・シェルバコワ、2位アレクサンドラ・トゥルソワ、3位アレーナ・コストルナヤとジュニア勢が表彰台を独占。4位はスタニスラワ・コンスタンティノワ、五輪女王のザギトワが5位。グランプリファイナル5位のソフィア・サモドゥロワが6位、SP14位から巻き返したメドヴェージェワが7位。
ライブで見てたが、シェルバコワが完璧な4回転ルッツを下り、フリップ・ループ3-3、後半ルッツ・トウ3-3などノーミス。コンビネーションスピンで基本姿勢3つそろわなかったのだけが取りこぼし。技術点89.35
見るからに小さく細く、子どもとしか言いようがない体型だが、芸術性も十分に備えていて、見ていて曲芸みたいではなかった。
2位のトゥルソワも4回転何本?と注目されてたが、ルッツを決めてトウループは回転不足の転倒。それ以上4回転には挑まず、ルッツ・ループ3-3などしっかりまとめてきた。技術点90.22
むしろ脅威なのは3位のコストルナヤかも。4回転もトリプルアクセルもないのに、技術点80.78。後半2つの3-3、スピンとステップ全部レベル4、とにかく書く要素に加点が多い。演技構成点は全体の3番目、フリーは1位のシェルバコワと3.55しか差がない。
ジャンプの着氷姿勢がきれいだし、見ていて非常に表現力が豊かで、作品として完成度が高かった。まだ成長期ではあるが、ジャンプ技術は簡単に崩れそうにない。今後高難度のジャンプを身につけたら、ザギトワもうかうかしてられない
そのザギトワ、何がなんでも勝ちたかったか。ルッツとダブルアクセルで転倒、2本目のルッツはコンビネーションにするのを忘れて+REP。演技構成点に9点台が3つあっても、ちょっと厳しかった。
一方、メドヴェージェワは開き直れたか、気迫に満ちた演技。3回転ルッツを下りるとサルコウ・ループ3-3、フリップ・トウ・トウ3-2-2と決めて波に乗る。ダブルアクセル+3回転トウループで転倒したが、ミスはそれだけ。会場の声援に後押しされて、演技構成点は全体のトップ。
シニア勢では4番手なので、ヨーロッパ選手権や世界選手権に出られるかどうかはわからない。しかし、ここで渾身の演技ができたのは大きい。
ロシア女子ジュニア勢の勢いが、この先ずっと続くのかどうかはわからないが、ただ跳べているだけで勝てるわけではないと、ちゃんと見せてくれた大会。面白かった~~~
フィギュアスケート・第87回全日本選手権、男子ショートプログラムで高橋大輔が2位。
2位以下に8点以上の差をつけ、フリーの出来次第ではこのまま2位をキープ、少なくとも表彰台に乗る可能性が濃厚になってきた。
となると、世界選手権などの国際大会派遣が現実味を帯びてくる。高橋大輔が国際大会に出るには、強化選手指定→B級国際大会派遣→選手権出場に必要なミニマムテクニカルスコア獲得→世界選手権出場という手順が必要になる。
四大陸選手権に出るには、これからエントリーできる国際大会ではミニマムテクニカルスコア獲得が間に合わないので無理。出るなら世界選手権ということになる。
ショートプログラム後のインタビューで「この場所は居心地がいいな」「世界で闘うならより一層、心地いいんじゃないかな」と語っていた高橋大輔。再び世界の舞台に立つことが、視野に入ってきているのか。
今の実力は、十分に世界で戦えるレベルまで戻っていると思う。ただ、、、
再び日の丸を背負って戦う覚悟はあるか。
世界選手権では次回大会の出場枠もかかる。羽生結弦と宇野昌磨がそろって実力を発揮すれば、3人目は誰がどんな順位でも問題ないとも言えるが、大会では何が起こるかわからない。彼自身、トリノ五輪前年の世界選手権で、直前の本田武史の怪我で枠取りを1人で担うことになったという経験をしている。
昨季も、枠取りを期待されていた田中刑事がふるわず、補欠から出場の友野一希の頑張りで3枠が確保された。似たような状況になったとき、かつてエースだったときのように、とにかく結果を出せるか。
SP直後のインタビュー映像を見た。昨年まで一緒に番組を作っていたスタッフ達の顔を見て、緊張から解放されたからなのか、いい演技ができて興奮してたのか、なんだか“へらへら”している感じ。アスリートらしくない印象で、いい気持ちがしなかった。
私の印象なんか関係ないけれど やはり問いたい。
本当に、日本代表として戦う覚悟はあるか。
あるなら、行けばいい。ないなら、、、
ショートプログラムで思うような演技ができなかった田中刑事、友野一希。高橋大輔という大きな影がプレッシャーになっているかも。でも、戦う相手はたぶん自分自身。
今できることを全てやりきることだけを考えて、最高のフリーを滑ってほしい。その結果でチャンスをつかんでほしい。