―たしかにスコトゥスの哲学を知っている研究者は欧米でもきわめて珍しい。―
八木雄二、『天使はなぜ堕落するのか』;第III部 中世哲学の成熟と終焉、 第16章 「中世」の終わり。
■今年6月、拙記事;R.E. ルーベンスタイン、 『中世の覚醒』、小沢千重子 訳 に書いた;
『中世の覚醒』を読みとおす。理由は、『Amazon; 天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡 』が欲しくなった。でも、まだ『中世の覚醒』を読んでない。この上に『天使はなぜ堕落するのか』を買って、積ん読にしておくと無駄遣いに切りがないしなぁ。それでは、『中世の覚醒』を読んだら、そして、その証としてブログに読書メモを載せたら、『天使はなぜ堕落するのか』を買っていいこととした。
『中世の覚醒』の読後メモを書いたので、あの後、『天使はなぜ堕落するのか』を買った。ここ半年パラパラ読んでいた。そしてこの年末、今日がブログ記事ラスト2なので(ラストは"2010年回顧"と決まっている)、記事作成のために通読。西洋中世の思想事情を書いた本。著者、八木雄二の専門は中世哲学、それも、ドゥンス・スコトゥス。上記のごとく、ドゥンス・スコトゥスの研究者は少ないとのこと。このドゥンス・スコトゥスについて多くが書かれている。この点がこの本を立ち読みした時気づいて、買おうと思ったひとつの理由。なぜなら、ハイデガーの教授資格論文は『ドゥンス・スコトゥスの範疇論および意味論』であって、ドゥンス・スコトゥスの思想って何だべ?という興味があったから。ちなみに、この『天使はなぜ堕落するのか』にはハイデガーは全く言及されていない。でも、八木によればハイデガーは"スコトゥスの哲学を知っている欧米でもきわめて珍しい研究者"ということになる。今でも少ないらしい;
事実、著者の研究分野は、ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス(一二六五~一三〇八)の哲学であるが、おそらく読者には信じられないだろうが、世界で専門に研究している人間はごく少数であり、その数わずか六、七名でしかない。関連して興味をもつ研究者の数でも数十名でしかない(ただし、この数は増加中である)。
■鳥瞰としては、キリスト教の信仰と哲学の相克・協調・切磋琢磨。そして、アリストテレス。ヨーロッパ文明が古代ギリシアから直接継承した哲学・テキストはアウグスティヌス、ボエティウスが扱ったもののみ。これらの"乏しい"哲学的素養でアンセルムスは考えた。でもその頃、12世紀にイスラムからアリストテレスの翻訳がヨーロッパに流入。一大哲学興隆、しかも、都市の大学を舞台とした若者たちの学問修業。それまで修道院が学問の修行場であったのが、世俗で学問できるようになった。これに対し教会は信仰に若者を引き付けるため、信仰の哲学による合理化を図った。神学の形成。そして、その神学は世俗の大学に13世紀の初めに取り入れられ始める。
この相克の、学問的英雄であった若者がアベラール。八木雄二は「若者の活躍」を本書で鍵現象として何度も強調する。教会、大学とも「有為の人物」の確保が死活問題であると。それがヨーロッパ文明の核らしい。
■例えば、イスラム経由のヨーロッパへのアリストテレス哲学の導入が具体的に書かれている;第II部 中世哲学の誕生と発展、第9章 イスラム哲学。イスラム教発祥の経緯とイスラム教の特徴。つまり、イスラムは哲学文明ではなく、第一の学問は法学。医学も盛ん。イスラムの下記哲学は医者であったり法学者だった。古代ギリシアの哲学をペルシア人のアヴィセンナ[980-1037]やアラブ系で今のスペインのコルドバのアヴェロエス[1126-1198]についての説明。
■虫瞰。
第I部 中世とは何か
第1章 ヨーロッパ中世世界
中世哲学、つまりスコラ哲学は近代では評判が悪い。曲学の代名詞のごとく使われる。もっとも、おいらは、ハイデガーの伝記を読んで最近気付いたのだが、ドイツでは20世紀になってもスコラ哲学の教授というのは普通にいたのだ。戻って、スコラ哲学を無効化したとされるのがデカルト。でも、デカルトは終生フリーランスだった。本書ではデカルトら近代哲学者のスコラ哲学への恨みと書いている。つまりデカルトら近代主義者は大学で職を見つけられなかったのだ。近代哲学者で最初に大学教授になったのはカントだと書いてある。ということはやはりスコラ哲学教授は中世という過去のものではなかったのだ。
第2章 天使と秩序世界
八木雄二、『天使はなぜ堕落するのか』;第III部 中世哲学の成熟と終焉、 第16章 「中世」の終わり。
■今年6月、拙記事;R.E. ルーベンスタイン、 『中世の覚醒』、小沢千重子 訳 に書いた;
『中世の覚醒』を読みとおす。理由は、『Amazon; 天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡 』が欲しくなった。でも、まだ『中世の覚醒』を読んでない。この上に『天使はなぜ堕落するのか』を買って、積ん読にしておくと無駄遣いに切りがないしなぁ。それでは、『中世の覚醒』を読んだら、そして、その証としてブログに読書メモを載せたら、『天使はなぜ堕落するのか』を買っていいこととした。
『中世の覚醒』の読後メモを書いたので、あの後、『天使はなぜ堕落するのか』を買った。ここ半年パラパラ読んでいた。そしてこの年末、今日がブログ記事ラスト2なので(ラストは"2010年回顧"と決まっている)、記事作成のために通読。西洋中世の思想事情を書いた本。著者、八木雄二の専門は中世哲学、それも、ドゥンス・スコトゥス。上記のごとく、ドゥンス・スコトゥスの研究者は少ないとのこと。このドゥンス・スコトゥスについて多くが書かれている。この点がこの本を立ち読みした時気づいて、買おうと思ったひとつの理由。なぜなら、ハイデガーの教授資格論文は『ドゥンス・スコトゥスの範疇論および意味論』であって、ドゥンス・スコトゥスの思想って何だべ?という興味があったから。ちなみに、この『天使はなぜ堕落するのか』にはハイデガーは全く言及されていない。でも、八木によればハイデガーは"スコトゥスの哲学を知っている欧米でもきわめて珍しい研究者"ということになる。今でも少ないらしい;
事実、著者の研究分野は、ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス(一二六五~一三〇八)の哲学であるが、おそらく読者には信じられないだろうが、世界で専門に研究している人間はごく少数であり、その数わずか六、七名でしかない。関連して興味をもつ研究者の数でも数十名でしかない(ただし、この数は増加中である)。
■鳥瞰としては、キリスト教の信仰と哲学の相克・協調・切磋琢磨。そして、アリストテレス。ヨーロッパ文明が古代ギリシアから直接継承した哲学・テキストはアウグスティヌス、ボエティウスが扱ったもののみ。これらの"乏しい"哲学的素養でアンセルムスは考えた。でもその頃、12世紀にイスラムからアリストテレスの翻訳がヨーロッパに流入。一大哲学興隆、しかも、都市の大学を舞台とした若者たちの学問修業。それまで修道院が学問の修行場であったのが、世俗で学問できるようになった。これに対し教会は信仰に若者を引き付けるため、信仰の哲学による合理化を図った。神学の形成。そして、その神学は世俗の大学に13世紀の初めに取り入れられ始める。
この相克の、学問的英雄であった若者がアベラール。八木雄二は「若者の活躍」を本書で鍵現象として何度も強調する。教会、大学とも「有為の人物」の確保が死活問題であると。それがヨーロッパ文明の核らしい。
■例えば、イスラム経由のヨーロッパへのアリストテレス哲学の導入が具体的に書かれている;第II部 中世哲学の誕生と発展、第9章 イスラム哲学。イスラム教発祥の経緯とイスラム教の特徴。つまり、イスラムは哲学文明ではなく、第一の学問は法学。医学も盛ん。イスラムの下記哲学は医者であったり法学者だった。古代ギリシアの哲学をペルシア人のアヴィセンナ[980-1037]やアラブ系で今のスペインのコルドバのアヴェロエス[1126-1198]についての説明。
■虫瞰。
第I部 中世とは何か
第1章 ヨーロッパ中世世界
中世哲学、つまりスコラ哲学は近代では評判が悪い。曲学の代名詞のごとく使われる。もっとも、おいらは、ハイデガーの伝記を読んで最近気付いたのだが、ドイツでは20世紀になってもスコラ哲学の教授というのは普通にいたのだ。戻って、スコラ哲学を無効化したとされるのがデカルト。でも、デカルトは終生フリーランスだった。本書ではデカルトら近代哲学者のスコラ哲学への恨みと書いている。つまりデカルトら近代主義者は大学で職を見つけられなかったのだ。近代哲学者で最初に大学教授になったのはカントだと書いてある。ということはやはりスコラ哲学教授は中世という過去のものではなかったのだ。
第2章 天使と秩序世界