菅直人首相が国民の前に現れないというので、マスコミが批判を始めた。ここまで民主党政権が機能しないとなると、ついつい北一輝の『国家改造法案大綱』を引っ張り出したくなる。もはや西洋流のデモクラシーでは限界だ。時間を区切って権力を一元化し、それによって混乱を最小限におさえるしかない。その本の緒言で北一輝は「今ヤ大日本帝国ハ内憂外患ナラビ到ラントスル有史未曾有ノ国難ニ臨メリ」と述べるとともに、「一歩誤ラバ宗祖ノ建国ヲ一空セシメ危機誠ニ幕末維新ノ内憂外患ヲ再現シ来レリ」といった状況分析をしている。領土問題では中共やロシアに侮られ、そして今回の大震災と原子力発電所のトラブルである。絶対絶命の今の日本を憂いているかのようだ。そして、革命家らしく「日本国民ハスベカラク国家存立ノ大義ト国民平等ノ人権トニ深甚ナル理解ヲ把握シ、内外思想ノ判別採捨スルニ一点過誤ナカルベシ」との結論を導き出した。それはアナーキーな世の到来を希求したのではない。古代から連綿と続く天皇陛下の名の下に国家改造を決行しようというのだ。平成維新という言葉が意味を持ってくるのは、それを実行に移した段階においてではないか。北一輝の禁断の書には、まだまだ人を惹きつける力があり、色あせたわけではないのである。
福島市で放射能物質の汚染についての講演会が行われたようだが、それをラジオ福島で流していたのを聞いて、唖然としてしまった。講師は長崎大学かどこかの教授なようだが、まず医者特有の傲慢な態度に腹がたった。そして「出荷停止になっている牛乳や青物を食べてもよいのでしょうか」との女性の質問に対しては、笑いをとりたいのか「ぜひ枝野幸男官房長官に飲んだり食べたりしてもらいましょう」と答えていた。あまりにも冗談じみていて、違和感を覚えてならなかった。さらに、ビックリしたのは、楽観的な見方である。今の状態が一週間で終息することを前提にして語っていたからだ。しかし、福島第一原発にともなう放射能物質による汚染は、日々拡大しており、つい先ほど東京都は「乳幼児に水道水を飲ませないように」と都民に要請している。こんな事態になっても、枝野長官が口にする言葉は「直ちに健康に影響が出ませんから、心配はいりません」と決まっているが、隠すことなく公表に踏み切った東京都の姿勢は評価されるべきだろう。3月11日の地震の発生のときから今まで、原発のトラブルに直面しても、国民は辛抱強く耐えてきたが、東京都民の飲み水が汚染されるようでは、何を信じてよいのか分からなくなる。今日の朝までは福島県レベルでの心配であったが、それが日本全体の問題になりつつあるのだ。今こそ国は国民に真実を語るべきなのである。
明日にでも解決するかのようなことを民主党政権やマスコミは言っているが、福島第一原発で起きていることは深刻そのもので、放射性物質が拡散するのを止めようがなくなっているのではないか。厚生労働省は今日未明、ホウレンソウ以外のキャベツやブロッコリーからも、暫定基準値を超える放射性ヨウ素と放射性が検出されたと発表した。このため、厚生労働省は「福島県産の葉物野菜は食べないように」と呼びかけており、福島県の農業は壊滅の危機を迎えている。これまで枝野幸男官房長官は「直ちに健康には影響はありません」との記者会見で述べていたのに、その言葉とは裏腹な事態になっている。後一歩で電源が復旧して、原子炉や核燃料一時貯蔵プールを冷却できる可能性があるというが、そこまでの道のりがあまりにも長過ぎた。許せないのは民主党政権の対応である。生命に関する情報を統制し、結果的に国民の安全を軽んじることになっているからだ。これによって福島県の一部である会津地方も、葉物野菜は県外から持ってくるしかなくなった。地のものは全て廃棄することになるだろう。たとえメルトダウンを阻止できても、拡散された放射性物質によるダメージははかりしれないのである。