保守政党であるはずの自民党が、安易に「変える」という言葉をスローガンにしたがために、今回の総選挙では劣勢に立たされることになった。石破自身が政策ではなく、自民党を「変える」とか言って、パーティ券の不記載を最大の争点にしたことで、墓穴を掘ってしまったのである。
国民の命や暮らしを守ることがまったく論じられることなく、総選挙も終盤に入ってしまった。多くの有権者は、何を基準にして選べばいいのか分からず混乱してしまっている。
田中美知太郎は変革を唱える者たちの独善性を批判した。「このような人々が、いかに進歩を説いても、それは大衆を前進させる力を持たないであろう。私たちは、そのような進歩的独善論から遠ざかって行く人々を、保守的とか意識の低さとかいうう形で見るよりも、私たち自身が彼等と共有している、大地のように広くて厚い生活の実際を、もっとよく理解するようにしなければならない」(『哲学的人生論』)と書いていた。
自民党はその原点に立ち返り、保守の考え方を再吟味しなければならない。日本の国柄を否定し、新しいものに飛びつくのではなく、何度でも言うが、あくまでも大切なものを守るための改革でなければならないのである。