帰るべき日本があることを、即位の礼は教えてくれたのではないだろうか。江藤淳は「『氏神と氏子の原型』―占領軍の検閲と柳田国男—」という一文を残した。そこで明らかにしたのは、今もなおマッカーサー司令部GHQの民間検閲支隊によって削除された部分が『定本柳田国男集』で復元されていないという衝撃の事実であった▼柳田は『氏神と氏子』に収録された「未来の史学」において「日本神社に対する進駐軍の司令の如きは、驚くべく大まかな、向こう見ずと評してもよいものであって」と論評した。その文章が「今度の変革で目に見えた影響を受けるものは、二千と無いであろう」と書き直させられたのである。GHQの検閲は巧妙であり、柳田ですら自由に物を言うことはできなかったのである▼GHQの宗教政策に対して抗議をしたがために、柳田も検閲の対象となったのである。江藤その本はGHQ弾劾の書であった。神道について「そこを通って仏教にもキリスト教にもいたる日本人の宗教環境であることをGHQは認めようと」しないばかりか、「人々は『永久にこの国土のうちに留って、そう遠方へは行ってしまわない』無数の『霊』の存在を、できるだけ早く忘れてしまうように要求された」ことで、日本人の大切なものが否定されたのだった。日本を取り戻すというのは、柳田が守ろうとした価値観を、私たちがもう一度思い起こすことなのである。
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