岸田内閣を岩盤保守がこき下ろすのは、日本人としてのプライドが傷つけられたからである。バイデンやエマニュエル大使の言うことに対して、唯々諾々と従う姿に怒りを覚えたのである。
このことが日本の政治に与える影響は計り知れないものがある。E・エリック・ホッファーは、人間にとってプライドがどれだけ重要であるかを問題にした。
ホッファーは「人民にプライドを与えれば、かれらは、パンと水だけで生き、かれらの搾取者をたたえ、かれらのために生命さえも投げ出すだろう」(『情熱的な精神状態』永井陽之助訳)と書いている。
戦後の日本の政治は、米国との同盟関係を軸にして行われてきた。敗戦という精神的なダメージを押し隠すように、民主化という言葉によって、それを正当化してきたのである。
それでも経済復興を成し遂げ、欧米に匹敵する国家として、それなりの国際的な役割を担いつつあった。しかし、今回の米国の傲慢な態度と、その走狗と化した岸田内閣の体たらくによって、日本人のナショナリズムに火が付いてしまったのである。
岸田首相はまだ、その恐ろしさを知らないようだが、ホッファーは「プライドは、もともと自分の一部でないものから、引き出される価値の感覚である。空想された自己、指導者、聖なる大義、集合体や所有物に、自らを同一化するとき、われわれはプライドを感じる。だから、プライドには、恐怖と不寛容がある。それは感じやすく、非妥協的である」(『同』)とも指摘している。
人間はプライドなしには生きられないのであり、岸田首相に対して、岩盤保守が怒り心頭に発するのは、予想されたことなのである。
ことここにいたっても、岸田首相はなぜ批判されているか分からないはずだ。これからはダッチロール状態になるだけである。一刻も早く政権の座をおりるべきだろう。このままでは自民党そのものが消滅しかねないからである。