トランプのアメリカ第一主義が世界に衝撃を与えています。自由貿易の盟主であったアメリカが、それを否定するような動きをしています。
トランプは気付きました。アメリカは自由貿易の恩恵に浴していないことに。一部の特権階級が富の大部分を支配し、大部分のアメリカ人は生活苦に悩まされています。産業部門が大幅に縮小し、科学者やエンジニアの数が、他の先進国に比べて、非常に少なくなってしまいました。モノづくりができなくなっているのです。
だからこそ、トランプは特権的な裕福層を敵に見立て、多数派のアメリカ人の声を代弁する形で、ホワイトハウスに乗り込むことができたのです。自由貿易の根拠となっていたのは、リカードが提唱した比較優位説です。それで損をするのはアメリカだということを、トランプが理解しているということです。
比較優位説とは「自由貿易の下で、各貿易国が自国の得意な分野に特化することで、対象国全体の労働生産性が上がり、互いに高い利益を得られる」という考え方です。
それぞれの国が得意な分野に力を入れ、貿易をすることで、メリットが得ることができるというのは、あくまでの理論上のことであり、アメリカの場合には、裕福層に利益をもたらすことがあっても、労働に従事してきた白人中間層には、多大な打撃を与えたのです。
トランプの路線転換は、自由貿易の恩恵に浴してきた日本にとっては、未曽有の危機といっても過言ではありません。貿易に頼らないように、内需を拡大し、国内に投資して、景気を刺激することで、当座は乗り切るしかありません。
緊縮に舵を切りつつある石破内閣では、我が国に押し寄せてきている荒波に持ちこたえることは困難です。トランプを甘くみてはならないのです。