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『終わらざる夏』

2013-07-23 16:07:37 | 本・映画・音楽の感想

前に時代小説はあまり好きではないと書いた。
でも、読まないわけではないし、なかには好きな作品もある。
一方、戦争小説については、これははっきり言える。大きらいだ。
とりわけ近代戦争をあつかったものが。
最悪なのは太平洋戦争を舞台にしたものだ。
あ、でも、『永遠の0』という例外があったなぁ……

浅田次郎の『終わらざる夏』を読もうと思った理由ははっきりしない。
舞台が千島列島のもっとも遠い島・占守島(シュムシュトウ)だったから?
日本が無条件降伏したあと、どさくさに紛れて攻めてきたソ連軍に
それら千島にいた日本人がどう対応したのか、まったく知らなかったから?
理由はきっとそのあたりだろう。

じっさいは、ソ連軍が占守島に攻めてくるのは、小説のかなりあとの方で、
多くのページが費やされるのは、千島の北辺の島へやって来る(送られる)
ことになる軍人や一般人のそうなるまでのエピソードだ。
加えて、息子や夫や父をそうやって奪われて、あとに残された家族の物語。
さらには、攻撃側のソ連軍人のエピソードも含まれている。
運命に翻弄された事実は、彼我ともに変わらない。

太平洋戦争を舞台にしたドラマや映画は、好きではないにしても見たことはある。
けれど戦争が、ふつうに暮らしていた人々の生活や家族や将来の夢の
ことごとくをぶちこわし、引き裂いていくさまを、まったくちがった立場に
ある人々の群像劇を通して、こうまで目の当たりにさせられると、
その理不尽さには言葉を失ってしまう。

でも、考えてみれば、人間の歴史はそうした理不尽さの集積だ。
そして、自分が生まれて生きてきた国と時代は、人類史のうえでは
奇跡のような場所と時間だったとあらためて思った。

戦争反対。憲法第九条改悪反対。


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