今でも聴きまくっているけれど昔ロックやジャズを聴きまくっていた時、そのルーツをさかのぼってさらに古いブルースとかを聴き、そしてもっと源を探っていくと黒人奴隷の故郷・西アフリカに源流があるってことを知り、アフリカ文化に関する本を漁ってた時期がありました。
ロックやジャズやレゲエやブルース。皆さんも大好きだと思いますが、一体なーんでこんなに心にグっと来るんだろうか? なにかシークレットがあるんかな?っていう好奇心からちょっとそこにこだわり、それをテーマに大学の卒論を書くまでに至ったことがありました。
まあそういう関係もあってアフリカ文化の本はかなり読み込んだわけですが、特に面白かったのがこの「アフリカの魂を求めて」ヤンハインツ・ヤーン著、黄寅秀訳(せりか書房)、って本ですね。
で、アウトドアと関係ないように見えてすごく関係ある本だと思うので簡単に紹介させていただきます。まあ、冬のアームチェア・アウトドアシーズンは感性を深めるためにこんな話題も大事なんだよね。
「アフリカ」とひとえに言っても大陸なので凄く広く、一筋縄では行かないところがありますがそれでも文化として共通するところは、「万物にスピリットが宿る」と捉える多神教の世界観・宇宙観になりますね。アフリカの自然って凄いってことはみんな承知の事実だと思いますが、その大自然を畏れ、敬い、喜び、悲しみ、自然とともに生きる中で培われた自然観の伝統があるのです。
ではその特徴は何なのか。非常に簡単に言いますと、生命至上主義というか、生きとし生けるものが持つパワー、生命エネルギーを尊び、そこに神を見い出すという文化ですね。まあそれは神道とか縄文文化とかとも同じですが、特にそいつを称える表現として「リズム」と「色彩感覚」を重んじるというのがアフリカの伝統文化最大の特徴だと言えます。そこは他の似通ったアニミズム文化と比べても突出しています。
万物に神が宿る、その神とは「ントゥ」という名で表現されていて、「ムントゥ」(人間)、「キントゥ」(事物)、「ハントゥ」(時間と空間)、クントゥ(様相)、と、「ントゥ」は森羅万象に偏在しますが、その「ントゥ」さんという目に見えないエネルギーを、アフリカ人たちは特にリズムと色彩感覚で表現してきたというわけです。
アフリカ人ってリズム感凄いでしょう?
またアフリカの民族衣装の色彩感覚って凄いでしょう?
それは要するにそういうところから来とるというわけですね。
目に見えないものや感覚を大事にする文化って、
インドとかもそうだけれど、すごく深いんですね。
で、南北アメリカ各地に奴隷として連れてこられた際に、
そのエッセンスは、それぞれの地で異文化と接触し、
新しい文化を生みました。
北米ではジャズやブルース(ロックはその息子)
ジャマイカではレゲエ、プエルトリコではブーガールー、
キューバではルンバやサルサ、ハイチではコンパ、
マルチニークではズーク、ベリーズではプンタロック、
コロンビアではクンビア、アルゼンチンではタンゴ、
そしてブラジルではサンバやボサノバ、などなど、
各地に飛び散り、また新たな色彩を花開かせたわけですね。
で、それらを聴いていてグっと来るのと、
カヤックで自然に触れることによってグっと来るのとは、
めっちゃ共通項を感じるのですが、
それは多分そういうところから来てるんだと思います。
また根底には「奴隷制」「植民地」という、
とんでもなく悲惨極まりないバックグラウンドがある。
けれどどれを聴いてもエネルギーがありポジティヴでしょう?
そこが人種を超えてグっとくるところなんですよ。
彼らの歴史に比べるとおれらの悩みなんてちっぽけだもん。
ぼくがシーカヤックに乗り始めたのは20代後半なんですが、
初めて乗った瞬間、うわあアフリカっぽいなあと思いましたね。
だって海の波うねりってリズムそのものじゃないですか。
そしてエネルギーと色彩感にあふれている。
プラス、すっげえ縄文っぽいし、インディアンぽいし、アボリジニーっぽい。
これは一生追求していくべきワールドだなあと直観しましたね。
またこの本で、色んな黒人詩人の存在を知ったというのも勉強になった点です。ナイジェリアのウォレ・ショインカとか、セネガルのレオポルド・セダール・サンゴール、ビラゴ・ディオップ、キューバのニコラス・ギリェン、マルチニークのエメ・セゼール、エドゥアール・グリッサンなど。ちょっと「植民地からの独立~」という政治性が強すぎたりして読みにくいんだけど(だってレオポルド・セダール・サンゴールなんてセネガルの初代大統領になってんだぜ)、こういう流れからのちのちの世代にはきっと黒人のすごいアウトドア詩人とか、出てくると思いますね。
アフリカ人もインド人も、みんなシーカヤックやる時代は
いつか来ると思います。