プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

すさみ町・江須崎

2012-01-04 01:45:51 | インポート
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 南紀には海岸線から突き出た岬や小島に、
 原初の味わいを残す秘密めいた場所が多いのですが、
 先日、その中でも大好きなひとつ、
 すさみ町の江須崎に行きました。

 周囲3キロ、高さ36メートルの、
 陸とつながった小島で(陸繋島という)、
 全体的にふくよかな丸みを帯びていて、
 全島神域として保護されている、
 緑あふれる空間です。

 シイ、イトマキ、ホルトノキ、ウバメガシなどの樹林群落から、
 ハカマカズラ(北限は湯浅の黒島)、ハマセンダンなどの稀少種まで
 島内の植物は200種以上におよびます。
 亜熱帯性原生林としての北限域でもあり、
 一歩足を踏み入れると暖かい黒潮に育まれた木々の香りが
 ひときわ濃密かつ爽やかで、
 いつまでいても飽きのこない居心地のよさに包まれます。

 外周を歩いていると、木々の合間から海が見えます。
 群青色の、典型的な黒潮ブルーの海。
 地球の丸みを如実に感じさせる外洋の大海原で、
 デカい貨物船なども頻繁に通ります。

 見晴らしのよい場所に腰かけ海を眺め
 その独特のブルーに見とれていると、
 宇宙の中にひときわ青く輝く地球の姿を連想してしまいます。
 そして地球の中の太平洋、太平洋の中の日本列島、
 日本列島の中の紀伊半島、紀伊半島の中の江須崎島、
 というように意識がズームアップしてゆきます。
 ここは黒潮エッセンスを真空パックしたような場所というか、
 黒潮の流れの中のひとつの母船というか、
 その丸みの帯び方と相まって、ひと味もふた味も違う空間だなと感じます。

 黒潮の沿線上にはそういう場所がいくつもあるのでしょう。
 そして縄文時代とか古来には、そういう空間をつなぐ
 神域ネットワークみたいなものが文化としてあったんだろうと思います。
 沖縄~南九州~四国南岸~紀伊半島~伊豆~房総半島ってエリアを
 縄文系海洋民は普通に行ったり来たりしてましたからね。

 ひとつの場所からより広い世界への憧憬に広がってゆくような、
 イマジネーティヴな感覚がこの島にはあります。
 エス崎ともS崎とも読み取れ、語呂としても味がありますね。 
 田辺湾の神島と同じく大昔からの原生林でありながら、
 誰でも行ける場所なので、南紀の串本などに行く道中には
 訪れておくべきだと言えるでしょう。
 
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