7時半起床。昨日食べ過ぎたので、朝食は抜き。
ホテルの前からタクシーに乗り、「統一会堂」へ。料金が2万ドンだったのだが、桁が1桁違うと言われ、言われるがままに20万ドンを支払う。10倍とはなかなか思い切ったぼったくりだが、それ故その場では気付くことが出来なかった。
統一会堂は、南ベトナム政権時代の旧大統領官邸で、地上には会議室や宴会場、応接室など、普通の光景が広がっている。しかし、地下に下りると雰囲気が一変。固い鉄の壁に囲まれ、司令室や暗号解読室、連絡室など、一気に戦時中の張り詰めた空気がひしひしと伝わってくる。最終的には、ここに北ベトナム軍が無血入場してベトナム戦争が終結を迎えるわけで、そんな歴史の転換点の象徴ともいえる建物の中に自分がいるというのは、何とも不思議な感じがした。
今は、ホー・チ・ミンの像が飾られている。
地下に下りると、雰囲気が大きく変わる。
戦争終結後、実際に建物の上に飾られていた南ベトナム解放民族戦線(北ベトナム軍)の旗。
続いては、近くにある「戦争証跡博物館」へ向かう。しかし、方向を90度間違え、5分も掛からないところを30分近く掛けて歩くことになった。
公園で、剣を使った体操教室が開催されていた。
「ベトナム証跡博物館」の外には、当時実際に使われていた戦車やヘリコプター、戦闘機などが飾られている。もう40年近く前のものなので、昔の映画に出てくるような懐かしい感じもするが、実際にこれらがたくさんの人を殺した道具だと思うと、何とも言えない気持ち悪さをおぼえた。
これからベトナムを訪れる人のために書いておくと、この場所を訪れる際には、それなりの心の準備をしておいたほうがいい。展示されている写真や戦争遺物の生々しさは想像をはるかに超え、ここに写真を載せることが出来ないような光景を数多く見ることになる。特に、枯葉剤による被害の凄惨さは、衝撃的という言葉では足りないくらいだ。通常の暴力行為ももちろん愚行だが、科学研究の成果を人殺しのために使おうという発想に強く怒りを感じた。それに、やっぱり戦争で一番被害を受けるのは、一般市民なんですね。
枯葉剤散布後の森。写真の2人は、その後どうなったのだろうか。
航空写真。枯葉剤散布前と後。
「拷問の島」と呼ばれた牢獄があり、記録によると想像を絶する拷問が行われていた。
日本の反戦運動の記録も展示されている。
戦争証跡博物館からサイゴン川に向かって歩き、「サイゴン大教会」へ。この街の雰囲気にはあまり似合わない、優雅な教会である。昨日ガイドをしてくださったコンさんによると、ベトナム人の8割は仏教徒だが、その次に多いのがカトリック教徒(約1割)らしい。実際、今日も多くの地元の人々が祈りを捧げていた。また、教会の前で、ちょうど結婚式の写真を撮っている新郎新婦がいて、その2人の幸せそうな笑顔がとても印象に残った。
末永くお幸せに。
教会のすぐ隣に、「中央郵便局」がある。フランス統治時代に建てられたものということで、これも街の雰囲気にそぐわない。
次の目的地であるバインセオ(ベトナム風お好み焼き)屋さんに向かう途中、そのお店の近くでピンク色の教会を見つける。「タンディン教会」という、きちんとした教会らしい。しかし、私の中では、教会の聖なるイメージとピンク色がどうしても合わない。神様を冒涜する発言になってしまうかもしれないが、これが日本にあったら、間違いなくラブホテルだと思うだろう。
お目当てのお店の開店まで少し余裕があったので、タクシーに乗って「永厳寺」(ヴィンギエム寺)へ。日本に留学したお坊さんが開いたちう、南部最大規模を誇るお寺だ。日本の曹洞宗のお寺から寄贈された「平和の鐘」もあり、日本との縁の深さを感じさせてくれる。ただ、しつこい線香売りや、無理やり案内をしておいてチップを要求してくる人(しかも子ども)がいるのが鬱陶しかった。最終的にはこちらが怒鳴りつけるまで追いかけてくるのだから、たまったものではない。ちなみに、そういう行動をお寺でするのは不謹慎だと思うのは、日本人的な感覚(更にいえば私だけの感覚?)なのだろうか。
「平和の鐘」。日本語で平和を祈る言葉が刻まれている。
再びタクシーに乗り、先ほどのバインセオのお店「46Aバインセオ」へ。開店直後だというのに、座席の大半が埋まっている。注文は、バインセオとココナッツシェイク。現地の人の食べ方を見ると、バインセオは焼肉のような要領で、葉っぱで巻いて食べるものらしい。生野菜を食べるのは不安だったが、せっかく来たのだからと、私も真似をする。味は、まあまあ美味しい。日本人の感覚では、お好み焼きというよりも、春巻きに近い味かもしれない。
中を開くとこんな感じ。
一旦ホテルへ戻り、ホテルのスパでマッサージを受ける。110分のフルコースで、チップも入れて約50万ドン(2,000円)。通常のボディーマッサージに加えて、顔のパックや塩のマッサージ、オイルマッサージ、熱い石を使ったマッサージなど盛りだくさんで、最高に気持ち良い時間を過ごすことが出来た。
タクシーに乗り、サイゴン駅へ。鉄道マニアとしては、外国に来たら駅と電車を見ないと気が済まない。しかし、あいにく次の電車の時間まで2時間近くあり、改札が閉まっていて、ホームに出ることすら出来なかった。残念無念。
電車に積み込む荷物がこんなにいっぱい。
待合室。案外(と言っては失礼だが)近代的。
切符売り場。
これが時刻表。
またまたタクシーに乗り、ベンタイン市場へ。ホーチミン最大の市場ということで活気があるが、観光客が多いため、全体的に価格設定が高めらしい。そのため、特に買い物はせず、1周回ってからチェーを飲んで出た。
国営百貨店の中にあるスーパーでお土産を購入。同時に、あまりに汗だくになるので、Tシャツも1着購入した。結局、今回の旅行で最もお金を使ったのはここだった。決して大量に買ったわけではない。他でお金が掛からないのだ。
ドンコイ通りにある世界的にチェーン展開もしている有名なフォーのお店「フォー24」へ。定番の牛肉のフォーと、タイでハマったスイカスムージーを注文。どちらも美味しかったが、また会計でぼったくられた。世界展開しているきちんとしたお店だからと油断していたところを突かれ、ほぼ倍の金額を取られた。しかも、一度出したお札を手際良く隠し、もう1度同額を出させるという手口。金額的には微々たるものだが、ぼったくろうとする姿勢そのものが気に食わない。ちくしょう。
スイカスムージーはどこで飲んでも美味しい。
これらを自由にフォーに入れて食べる。
フォーそのものは美味しかったんですけどね。
この頃になると、いつの間にかバイクの波にも完全に慣れていた。ただ、時たま路上を猛スピードで走ってくるバイクがあって、それはかなり怖い。路上で信号待ちをしていても轢かれる可能性があるなんて…。
最終日の夕食は、少し奮発をして、「ギースアン」というレストランでフエ料理(フエというベトナム中部の宮廷料理)を食べる。お店の雰囲気や店員さんのレベルからしても完全に高級店だが、それでも掛かった総額は2,000円ぐらいだ。注文は、米粉を蒸した上から干し海老をのせた前菜「バイン・ベオ」と、様々な具材ののった混ぜご飯「コム・ヘン」。バインベオはつるっとした食感で、米粉のほのかな甘みと干し海老の香ばしさがうまくマッチしていて、とても美味しい。大量に出て来たので全てを食べることは出来なかったが、それでも一気に4皿も平らげてしまった。また、コムヘンは素材ひとつひとつの食感や味をそのまま感じられるあっさりした味付けで、付属のタレがまた素晴らしく、こちらも美味しかった。そして、最後にデザートして、「バイン・フラン」も注文。要するにカスタードプリンなのだが、日本で食べるものと比べてはるかに密度も味も濃く、驚かされた。見た目が同じなだけで、食感や味の違いが余計に際立っていた。あっぱれ。
「バイン・ベオ」
「コム・ヘン」
「バイン・フラン」
最後の最後、本当の最後に、ホーチミンで今一番熱いと言われているスカイバー「チル」(Chill)へ。オープンエアーのスカイバーで、空中船のような空間だ。カウンターで「何かジュースはないか」と聞いたら笑われたが(クランベリージュースが出てきた)、それもご愛嬌。カウンターから見える景色は本当に素晴らしく、風も気持ち良くて最高の気分だった。
ホテルへ戻り、シャワーを浴びてベッドに入り、ゴロゴロして過ごす。実は、今日の昼前からお腹を壊し始めていて、段々とひどくなってきている。やっぱり、生野菜はまずかったか。でも、最後まで支障なく観光出来たので良かった。明日は飛行機に乗っているだけなので、何ならずっとトイレに籠っていればいい。