高齢カップルが店に来ると
自分たち夫婦の将来を思い細かく観察してしまう癖がある。
今日はこんなカップルが印象に残った。
”Strong ” と言う文字がプリントされた
今風でおしゃれなシャツを着た婦人は
口をぽかんと開け無表情、、、。
目は宙を見つめている。
彼女とやって来た長身でスリムな老紳士が
私を見るや
店のクーポンが使えるかどうか
確かめるようにそれを差し出す。
”お好きな物をオーダーなさってください。
それと同じ価格かそれ以下の物が一つ無料となります。”
そう説明すると安心したかのように彼が注文を始めた。
婦人は無言で口を開けたまま老紳士の傍に立っている。
脳卒中にでも罹られたのだろうか、、、と
そんな様子の婦人に義母の姿も重なった。
着ておられたシャツにプリントされたストロング と言う文字から
彼女を想う家族の気持ちが感じられ
深く愛された婦人を思うと
私までそんな温かい愛に包まれるようだった。
オーダーされた一つの料理が出来あがるまで数分かかるので
”出来上がり次第テーブルにお持ちします。” と言って
レストランに入っていただいた。
出来上がった料理を運び
”熱いですから 舌を焼かないようお気をつけ下さい。” と
婦人に言った私に
喉の奥から声をあげようとでもするかのようにし
彼女が何度も頷いた。
暫くして その婦人がピンクの花柄のケースに入ったスマホを手にし
レストランのレジの列に並んでいるのが見える。
会計は食事をする前に済ませるので
一体なぜ列に並んでいるんだろう、、、と気になり見ていると
婦人は自分の番になるや
スマホをキャッシャーに差し出し
そのスクリーンを見せていた。
(お孫さんの写真でも見せているんかな、、) とそんな事を思っていると
今度は私が立つバッフェのコーナーに来て
カウンター越しにそのスマホを私に向け差し出した。
見ると スマホのスクリーンには震えた線で
Thank you と書かれていた。
”ありがとうございます。
又いらっしゃってくださいね。”
胸が一杯になってそう言った私に
小さく頷き返し
婦人は老紳士の後に続いて店を出た。
今思い出してもウルウルする出来事だった。
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ラブに包まれたワン