毎年、春から秋にかけて
木曜日の夜だけ
お隣さんが経営するレストランのお手伝いをしていた。
コロナで休業になり
再開しても客数に制限も出来たし
今年は手伝う必要はないだろう
と
思っていたら
オーナーから
今年の夏も又
お手伝いに来てもらえるかしら
と
テキストメッセージを頂いた。
寿司の仕事を5時に終え
イリノイに帰る途中
レストランで数時間働き家に帰る事になる。
お金が欲しい
と
言うより
見知らぬ人と会話を持ったり
身体を動かすこの仕事は好きなので
引き受けた。
それが今日からスタートする。
来週 寿司子が有給休暇を取る事になり
その間
寿司職のスケジュールも
週5日40時間に増えた。
忙しい水曜日は
この部署のマネージャーである中国人のトンさんと
寿司を握る事になる。
台湾出身のトンさんがこの店で働き始めた頃
母親が日本人であると聞かされた私は
ある日
”日本人のお母さまのお名前は何なんですか?”
と
訊ねた事があった。
するとトンさんは
ぎょっとしたような表情になり
5秒間ほどの沈黙を持った後
”YUKI”
と
短く応えた。
”あー 雪さん、、スノーって意味ですね。”
そう彼に返したものの
母親が日本人である事は嘘だと思った私は
それ以来
トンさんが話す事はほとんど聞き流すようになった。
何故そんな嘘をつくのかが理解できないので
彼が話す事は全て信じられないのだ。
先日は
”僕はそろそろここを辞めて
横浜で店をやってる母さんの手伝いに行こうと思うんだ。”
と
日本で暮らす話をし
その数週間後には
”君は熱海って知ってる?
僕のお父さんは熱海に家を持ってるんだ。”
と
そんな事を言う。
彼が嘘をつく人と思っていなかったら
私はきっとそんな話にのって
いろんな質問を彼にしていただろう。
そしたらトンさんは
もっと多くの嘘をつく事になる。
彼の作り話が続かない様に
”そうですか”
と
愛想のない言葉を返し
顔が合わない様に
ひたすら仕事をする。