先日、ネットのニュース記事で、「気の利いたひとことを添えた“胸キュン”ビジネスメールを送るには?」なんてのを見つけて読んでみたが、なんだかなぁ、という感じ。記事を抜粋すると、
「取引先の部長から『いつも会社にいるように感じますが、お休みはとられていますか?…変な気遣いすみません』というメールが届いて心が あったかくなった」(25歳・会社員)
「取引先の営業さん(女性)に『これが終ったら、一緒においしいお酒でも飲みましょうね』という一文の入ったメールをもらい、キュンときた!」(29歳・広告代理店)。
実はこれ、『R25』読者が思わず胸キュンしたビジネスメールのお話。堅苦しい文章が多い中、こんなメールが送られてきたら親近感も深まりそう!
そう、ネタ元は、悪名高き(笑)R25である(爆) これで、だいたい中味は分かってしまうだろう。で、どう思います?
なんというか、早い話が、この世代の連中は、仕事も遊びも同じ感覚なのだ。ま、悪いとは言いませんよ。不平たらたらこぼすより、皆と仲良く楽しく仕事した方がいいに決まっている。けど、けじめというか、もっと露骨に言うと境界線みたいなのがあるでしょ。“気の利いたひとこと”なんて言ってるけど、単なる馴れ合いではないのか、なんて昭和30年代生まれの僕は思ってしまう訳だ(笑) ただてさえ、メールだとくだけた文章になりがちなので、得意先にメールする時は、わざわざ堅苦しくしてるというのに(爆)
だいたい、ビジネスのメールにこんな事書いて、親近感を深めてどうするのだ。というか、何故そんな事をせねばならない? これで人間関係がスムーズになって、取引が上手くいくとでも言うのか。そんな甘いもんじゃないでしょう、ビジネスってのは。そんな事で契約が取れるなら、ひたすら“気の利いたひとこと”を添えたメールを、あちこちに送っていればいい、という事になる。引用した「胸キュン」メールとやらも、なんか口先だけ、みたいな感じがするのもイヤだ。第一、個人対個人の商売ならともかく、会社対会社の取引に於いて重要なのは、互いに利益を生む関係であるかどうか、であり、決して“気の利いたひとこと”なんかではない。会社というのは、互いに利益を生む為、または利益を生む相手と思って貰う為に、より良い商品やサービスの提供に務めているのであり、そんな小手先の営業策では、すぐに底が割れてしまう。若い人たちは、世に言う接待というものを嫌うが、何故かというと、ビジネスもプライベートもごっちゃになってしまうのが耐えられないから、という事らしいけど、その接待と気の利いたメールと、どう違うのだ? こういったメール自体、ビジネスとプライベートを混同してる事にならないのか?
しかも、この記事、唖然というするような事まで書いている。
「業務的な内容の中に、自分の気持ちを一つだけまぜると非常に効果的です。以前、テレビ局のデスクの女性から会議の場所を知らせるメールが届いたのですが、最後に『PS:バッグ変えたんですね! カワイイかもです』と書いてあり、これにはキュンとしました。本文はとても事務的なのに、PS以降は自分だけに向けたことが書いてある。しかも『気づかれたいな』と思っているポイントに会議連絡の中でさりげなく触れてくれたのもいいですよね。『カワイイです』ではなく、『かも』をつけてちょっとジラすあたりも余計キュンです」
なんと、書き方指南までしている。ちなみに、この発言は某放送作家によるものらしい。確かに、あの業界は仕事も遊びも区別ついてない感じもするが(笑)。
「持ち物をホメる場合は、物そのものではなく、それが似合うあなたが素敵だと伝えましょう。例えば『いつも素敵なスーツで、センスのよさに感心しております。いつか、僕もそんなスーツが似合う男になれるようがんばります』など、センスをホメつつ尊敬とやる気を伝える。とはいえ、ビジネスメールは、わかりやすく簡潔に内容を伝えるのが基本なので、まずは『お世話になっております』というあいさつと連絡事項を 伝え、最後に一文添えるのが理想的です。季節のあいさつも文の初めで なく、最後に加える方が全体の印象が和らぎますよ」
昔、水商売でナンバーワンになる秘訣、ってな記事を読んだ事があるが、そこに書かれていた事は、今引用したのと共通する部分が多い。水商売のお姉さんたちが客を掴むコツ、というのは通常の人間関係に於いても有効だ、とは思うけど、ビジネスに持ち込むなよ、という気がする。「スーツが似合う男」になる前に、仕事覚えろよ、と言いたくなる。仕事覚えれば、自然とスーツに合うようになるもんだ。だいたい、こんな事言われて喜ぶヤツっているのか。褒めてくれるんなら、もっと値引きしてよ、って所ではないのか。そんな事より、納期守ってよ、とか。少なくとも、僕はそうだ。というか、取引先の若いのに、スーツ褒められても、意図が見え見えで、却って気持ち悪い。
あくせく働いて出世しよう、などという考えを持ってない人は多いし、それはそれでいいと思う。個人の自由だ。楽しく仕事したい、というのも理解出来る。けど、仕事の場に馴れ合いの精神を持ち込んではいけない。仕事人間になりたくない、とうそぶくならきちんと仕事して定時で帰りなさい。仕事はしない、けどミョーに職場をユルい雰囲気にしようとするのがいて、そういうヤツに限って同期に比べて自分は昇進が遅い、とか会社に文句言ったりするのだ。僕の感覚では、仕事はキツいもしくはイヤなものだ。でも、それで給料貰っているからやってるのである。なので、楽しく仕事しよう、なんて考えた事もない。会社自体が楽しい場所ではないのだ、本来は。仕事に対するやりがいとか満足とかいうものは、あくまでも働いた成果が現れた時に生まれるものであり、決して取引先の人と仲良くなる事ではない。だいたい、冒頭の公私混同みたいなビジネスメールを書くヤツに限って、相手が心を許したとすると、ビジネスとプライベートは別ですから、なんて言うに違いないのだ。取引先と仲良くして仕事を上手く進めたいなら、休日返上くらいは覚悟して貰いたい。
もちろん、そんな大げさな事ではなくて、ちょっとしたひとことが、人間関係を円満にするんですよ、ビジネスに役立てよう、とか思ってませんよ、という意見もあるだろう。だが、僕に言わせれば、そこがユルいのだ。最近の人たちは、10代の頃からアルバイトが当たり前のせいか、仕事も私生活の延長みたいな捉え方をしている人が目立つ。仕事はあくまで仕事、私生活は私生活。人格が変わっても構わないから、そこいらは区別して貰いたいと思う。
忙しいR25世代だからこそ、“キュン”な一文を添える余裕を見せれば、気配りのできるオトナの男として評価も上がるかも?
だから、そんな余裕があるんなら、仕事覚えろっちゅうの。それにR25世代って忙しいのか。知らなかった(笑)