小手川君の母、野原さん、共に相手が何を考えているのかしらと探る様な眼差しになりました。しかしお互いに表面はにこやかで、沈黙したまま笑顔で暫く見つめ合っているのでした。そして内心共に何だか相手に対して不審なものを感じるのでした。
「社では、課長さんはどんな様子?」
「あなたや他の女子社員の方にはどんな風に接しておられるのかしら?」
小手川君の母から、会社での課長の様子に対する質問は続きました。
『課長と小手川君のお母様の間には何かあるのかしら?』訝った野原さんは、小手川君の母と上司との関係を感じ始めました。
「野原さん、課長さんと仲が良いのでしょう。」
思い余ったように小手川君の母がぽつりと声に出しました。野原さんはハッとしました。
『反対なんだわ!』
『どうも、課長と私の仲を疑われているようだ。』野原さんは小手川君のお母様の残念そうな表情から、不意にそんな事を感じ取りました。
『どうしようか、課長に言われたことをそのまま言ってよい物かどうか。』野原さんは迷いました。