Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(118)

2018-07-01 09:45:45 | 日記

 彼は考えました。

『そうだ、それぞれの家には家風という物が有るのだから、父の家は父の家で、兄の家は兄の家で、家は家で家の家風という物を作ればいいんだ、そうだ、そうしよう。』

結論が出ると、沈んでいた彼の顔色がぱぁっと明るくなりました。彼の顔に本来の朗らかな笑顔が戻って来ました。彼は自身で名案が浮かんだ事に上機嫌になると、ふんふんと鼻歌など口遊みながら自宅玄関前まで戻って来ました。

 ガタガタ…

戸が開きません。家の中は真っ暗でした。おーい、帰ったよー、等、家中に何度か声を掛けてみましたが、中はしんとして物音一つ聞こえて来ません。ひとの気配も全く無く、どうやら居留守では無さそうです。どうも本当に留守の様でした。彼は腕時計の時間を見てみました。まだ宵の時刻です。『何処へ行ったのだろう?』丁度食事の時刻でした。

 「さては、女共は外食と洒落込んだな。」

ははあんと思い着くと、彼は溜息を吐きました。

『鬼の居ぬ間に洗濯か、如何でもいいけど困ったなぁ。』

彼は財布も鍵も持たずに出かけたのです。仕様が無くポケットを探ってみると、小銭が数個、そしていつも持ち歩いている煙草が出てきました。彼は兄の家で食事にならずに帰宅して来たので、そろそろ空腹を覚えていましたが、取り合えず妻子が帰る迄自宅玄関先で一服する事にしました。