「所で、此処は何処の世界なんだい?」
一頻の孫の思索が落ち着いた頃、祖父は光君に尋ねました。今、彼等が見回すこの世界は、どうやら元いた世界、蛍さんの家の近所、あの大きな施設の中にある広場のようです。
「そうだなぁ。」
光君は我に返って周囲を見回しました。
「さっきの場所じゃないかな。」
彼は広場にある特徴的な柳の木を眺めながら言いました。「しかも、同時代みたいだ。」彼は見詰める木の様相から、時も全く同じ頃の年代だと判断したのでした。そこに有る柳の木に大した変化は無かったのです。それは前々回の世界にあった木と全くそっくりで、場所も大きさも枝ぶりも全くそのまま、前に見た時と完璧に同じ状態で広場に存在していました。
『不思議だな、同じ年代の同じ場所にほぼ連続して移動したなんて…。』
光君は信じられない気持ちで呆然としてしまいました。
『こんな事初めてだ。』
そこで彼は、何事かを推し測るようにこの世界の大気を漫然と感じてみるのでした。彼は首を傾げました。
「じっちゃん、何だかこの世界おかしくないか?」
彼は傍らにいるはずの祖父に問いかけました。祖父はこの時、孫からやや離れ、広場の石碑の傍に立っていました。彼は石碑の下に掘られた幾つかの穴を見詰めていました。