そうかと孫は俯き呟くと、
「でも、まだ死んだと決まった訳じゃないんだろう。」
と、じっちゃん、ほら、僕らの世界でも戦後何十年か経って発見された人もいたじゃないか、やり手のじっちゃんの事だもの、何処か南の島にでも流れ着いて、飄々と自活して暮らしているんじゃないかな、誰かに発見されるのを気長に待ってさ。そう彼は祖父を慰めるように冗談めかして言うと、祖父ににやりと笑って見せました。
『じっちゃんがそんななら、この世界、俺は尚更いない訳だ。』
彼は納得するのでした。
「それで、あの子は何で亡くなったんだい?」
祖父は思い付いた様に疑問に思っていた事を孫に尋ねてみます。ああ、と、孫は事も無げに言いました。
「首の骨が、折れていたそうだ。」
祖父は悲壮な顔をして眉をしかめました。
「あんな小さな子が…、また何でそんな事になったんだい。」
理由は分からないけど、と、孫は答えます。
「なってしまった物は仕方ないじゃないか、お医者様がそう言っていたんだから。」
あんな小さな子のか細い首なんて、何かあればポキンで一たまりも無いさ。内心とは反対に、さばさばとこう素っ気なく言って、彼は自身の内にある可なりの動揺を発散して紛らせているかの様でした。
『この時点迄に僕があの子に会ってさえいれば…』
こんな事にはならなかったんだ。そうすれば相手も手加減して殴ったんだろうに。彼女の首も折れる程迄には行かなかっただろうにと、彼はそんな事を考えてこの世界の蛍さんを大層不憫に思ったのでした。