しかし結局、兄嫁は病院へ向かう途中、家の事が心配だから、自分の長男が風邪を引いているからと説明すると、別れ道で彼と別れて自分達の家へ1人帰って行きました。
『他所の子より自分の子か。』
道に1人残った彼は少々苦々しく思いました。が、そうだなと考え直しました。結婚してそう年数が経たない自分には子供といっても娘まだ1人、でも、既に子沢山の兄の家では義姉さんもさぞや大変なんだろう、と思いやる事にしました。
『そんな事より、…』と彼は思います、『如何したのだろうか。』再び我が子の身を案じると、彼はひたすら娘が運ばれた病院へと急ぐのでした。
「遅かったよ。」
「そうなのかい。」
それでは残念な結果になったんだなぁと彼は言うと、いい子だったのになぁと連れの若い方の男性を慰めるように言葉を発しました。若い方の男性から様子を聞いた年配の男性は、意外な顔をして驚く風でしたが内心ほっとしたのは否めませんでした。実際彼にするとこれで厄介事が片付いたのです。
その年配の男性の顔色を窺いながら年下の男性は言いました。
「あの子が居なくなってほっとしたんじゃないの?」
本とのところはそうなんでしょう。そう言う若い方の彼に年嵩の男性は案外すんなりと本音を言いました
「まぁ、正直そうだな。そう言うお前は?」
本当の所はお前もそうなんじゃないのか。年配の男性は長らく感じて来た疑問をこの機会にと考えると、若い方の男性にそう水を向けてみるのでした。