Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(142)

2018-07-26 19:53:25 | 日記

 「先程も申し上げましたが、私共は旅の物です。」

道に迷ってご領地内に立ち入ってしまったようです、誠に申し訳ございません。光君は恭しく丁寧にこの国の言葉でお詫びの言葉を述べました。きわめて落ち着き払った態度です。慣れていると言った方が良いでしょう。彼の祖父はこれまでの人生上、異国の地でも相当場慣れしていたのですが、その祖父でさえ思わず感心してしまう程の、正に堂に入った孫の態度とういものでした。

『光も達者になって、外国語にもかなり精通したな。』

この祖父にすると、光君はやはりとても自慢に出来る孫なのでした。「お前、しばらく見ない内に一段とこの国の言葉が上達したな。」こう言うと、彼は目を細めて孫の立派な姿に見入って仕舞うのでした。すると祖父の言葉を聞いた馬上の男性が馬から降りました。

 「こちらこそ、失礼な事をしました。」

驚いた事に男性の言葉はとても綺麗な日本語でした。祖父は再び面食らうと、思わず目の前に降り立った異国の男性をしげしげと見詰めてしまいます。経験豊富な彼の目から見ても、どう見ても彼は生粋の異国人でした。『するとここは日本ではなく異国の地なのだな。』と祖父は思いました。

 「日本の方ですか?」

異国の男性は穏やかに2人に尋ね、2人が共に頷くと、彼はにこやかな儘気さくに彼等に近付くと、更に親し気に彼等に話掛けようとして光君の顔を見詰め、一瞬ハッとした感じになりました。彼には光君の顔に思い当たる物が有ったのです。

「君達、何時から来たの?」

親愛の情が消えた彼の言葉はもうこの国の物でした。


土筆(141)

2018-07-26 19:26:23 | 日記

 祖父の心配はもっともな事でした。その時です、ヒューっと風を切り裂く音がしたと思うと、2人の目の前、4、50㎝ほどの場所、土の上にぶすり!と矢が垂直に突き刺さりました。

『やっぱりか』、と光君は思い、矢が飛んで来たと思しき森の奥に向かって、両手を口にかざすと大声で怒鳴り始めました。

「僕達は怪しいものじゃありません。道に迷った旅のものです。遠い東の国から来ました。」

彼の言葉に、森の中から何やら返事がありました。そしてかぽかぽと蹄の音が聞こえて来たかと思うと、森の中から一頭の馬に乗った男性の姿が現れました。どうやら西洋人の様です。

 『ロビンフッドかしら?』

背中の矢筒と手には弓と小手という出で立ちに、祖父は有名な森の英雄を思い浮かべましたが、その時、祖父の言葉が聞こえたかの様に光君は、そんな有名人じゃないからと口にするのでした。光君はフフフと笑うと、

「この土地の御領主様だよ」

と祖父に説明するのでした。

「 前にこの世界と似た様な世界に出た事があったじゃ無いか。」

そう光君が言うと、祖父は酷く面食らいました。

「え!、初めてじゃないか、この世界は?、私にはそんな記憶はないよ。」

実際、この祖父にはその様な記憶が確かに無かったのでした。

 光君はそーっと横目で傍の祖父の顔つきを眺め始めました。その時です、

「何者だ。 」

 馬上の男性が厳めしく声を掛けてきました。


28、27度です

2018-07-26 11:20:37 | 日記

   毎年なら26か25度にする設定温度が、今年は28度でも涼しく感じます。蒸し暑い日は除湿にして27度で十分いけます。

   今年の設定温度の高さに、実は驚いています。この温度を涼しいと感じることが出来るくらい、今年は猛暑なのだと感動してしまいました。バテています。暑くてパソコンの前に座っている事が出来ません。


土筆(140)

2018-07-26 08:55:14 | 日記

   祖父の独り言でしたが、光君はその言葉を否定しました。

「否、あそこで待っていても、彼等は僕等に追いついて来るよ。」

あの世界と僕等が別物な様に、迎えに来る奴らも、僕らの世界か、またはもしかすると、別の世界の僕等と同じ位の文化水準の奴らかもしれない。否それ以上だと返って僕には好都合というものだ。労せずして益ありだな、彼はそう言うと、何時ものように自虐的な微笑みを浮かべてふふんと笑って見せました。

   「 …しかし、このままじゃ誰が誰か分からなくなるな。」

それも、否、それで、 …それでいいのかもしれない。彼はそんな事を言い言葉を切ると、目の前の真新しい世界にのみ集中して注意を向けました。

   「ここは何処で何時頃の世界だと思う?」

聞かれた祖父はさぁなぁと、やはり孫同様、辺りを注意深く見回して考えていましたが、見渡す限りの野っ原です。その先には木立が深く視界を塞いでいます。2人が立っている場所はどうやら森に続く平原のようです。彼が後ろを振り返ってみても、風景は前方の風景と大して変わりないのでした。彼は人家が目に入らない様子に何となく不安を覚えました。

 「戻らないか、光。」

 彼は、前以て孫からこの旅は片道のみの一方通行と聞いていましたが、やはりこの言葉を口にしてみるのでした。「ここは此処で自然に溢れていて良い所なんだろうが、人影が無いのが不安なんだよ。」