否。彼は呟きました。彼の目に映る数個の穴、石碑のこの場所にこの様にはっきりと開いた数個の穴等、前の世界には無かった事でした。
「前の時代と、時自体は同じでは無いんだ。」
彼は穴の様子を見詰めながら、自分に言い聞かせる様にそう言うと、孫にも注意を促すのでした。
そこで光君は自分が立っていた場所を離れ、もっと子細にこの世界を観察しようとして、広場中央にある流線的で女性的な容姿の柳の木に足早に近寄って行きました。
「確かに、じっちゃんの言う通りだな。」
彼は木の幹に手を置き、その細長い葉の感触をもう一方の手で確かめた後、彼自身の観察を終えて祖父の言葉の真である事を納得するのでした。
「違う時だな。今は多分春ではないね。」
こう言うと、光君は先程感じだ大気の違いに思い至るのでした。季節が違うんだ!だから大気の様子も違うんだな。季節にすると何時頃なんだろうか?。彼はより多くの情報を求めて、きょろきょろと辺りの万物に注意を向けてみるのでした。祖父もそんな孫の様子に同調するように、自身でも何かしらの季節の判断材料を見つけようと、周囲の動植物に目を向けてみるのでした。