「光。」
祖父が孫の名を呼びました。
「もういい加減、自分達の世界に戻らないか?」
彼は自分の孫に帰宅を促しました。
「お前が発見した理論の実験や検証もいいけれど。私は段々疲れて来たよ。」
家を出てから何日になる?と、彼は孫に尋ねました。
「さあなぁ。」
と孫。彼は祖父のこの手の質問に対しては毎回曖昧な返事と態度で臨んできます。
「お前、もしかしたら帰れないんじゃないのかい。」
事ここに至って、到頭祖父は聞き難かった質問を彼に対してしてみる事にしました。すると彼はふふんと鼻で笑うと自らを嘲るように、
「まぁ確かに、帰宅の目途はまだ立っていないんだ。」
と答えるではありませんか。
「でも、心配する事無いよ、尋ねて回るこの世界は奥が深いからね。」
事も無げに重大な事を言う彼に、祖父は呆気にとられました。「帰宅の目途が立っていないんだって…」よくそんな旅に自分の祖父を連れだしたものだ。彼は自分の孫の無責任さに呆れ、少々腹が立ってきました。
「出来物のお前の事だから、何か考えが有るんだろうけれど。」
少々無謀な旅行というものだ。私は疲れて来たよ。と、苦言を呈するのでした。