勿論、この紫苑さんの名前についての偽りは、先に紫苑さんが判断したように何れバレるのでした。一般の地球人ではないミルの場合は尚更でした。自分の目に映る紫苑さんの光、彼の体の周囲を彩るオーラの色の変化ですぐに分かったのでした。
『やれやれ』
ミルは苦笑いしてしまいます。勿論、表面は微笑んでいました。ああと、紫苑さんににこやかに同調して見せます。
『それにしても、用心深いというか猜疑心が強いというか、地球のこの年代の男性は何やら妙に偏って擦れた考え方をする物らしい。』
ミルはこの地球人の高齢になろうとする男性の思考を、物珍しくも意外にも思いました。彼は呆れながらも少なからず興味を抱くのでした。
『何でこうストレートに物事を受け止めないんだろうか?。』
『自分は相手の事を、人生の先達として敬意を持って接しているだけなのに…。自分の祖父も頑固一徹だったが、同じ頑固者という色合いでも、祖父とこの男性は少し違うなぁ。』
ミルの目に映る紫苑さんは彼の祖父と似たような色合いのオーラを持っていました。経験から彼は自分の祖父が相当頑固な人物だったと分かっていたので、祖父と同じ色合いの紫苑さんを一目見た時、彼には紫苑さんが可なり意思の強固な人物であると察しられたのです。
『頑固な寂しがり屋だな。』
ミルはその初老の老人を気の毒に思いました。それは彼の故郷の星にいる自分の祖父、祖母が亡くなってからは1人孤独で暮らしている祖父を懐かしむ思いからも来ていました。表面上は似た年恰好でもある彼等。ミルは彼等の相違をあれこれと把握分析してみるのでした。