『1人に対して集団で、何て稚拙な奴らなんだ!』
それまでの彼は、勿論、同年代のクラスメート達皆にレポートで負けたという事に劣等感を感じ、暗い気分で鬱々と滅入っていました。しかし、帰途一緒になったクラスメートの何人かが行った今の子供っぽい行為に、彼は俄然腹が立つとむしゃくしゃして来てしまいました。しかしその後、彼は自分の目の前に繰り広げられた、彼自身にとっては全く予想だにしなかった同い年の子供達の有様、あからさまに絵に描いたように幼い嫌がらせをする彼等の行為に呆然自失としてしまいました。それで彼はその場に佇んだままポカンと口を開けて目を瞬いていました。
『なんていう連中なんだ。』
「やる事まで自然回帰だ。本能のままに未熟な人間に逆戻りなのか?…。」
そんな言葉を呆気に取られて呟いた彼は、ふと後ろを振り返って来た道を見ました。
するとそこには、クラス1の秀才と噂に高い女の子が1人佇んで微笑んでいました。彼女には彼の声が聞こえたらしく、悪戯っぽそうに瞳を輝かせるとミルを見詰めました。ミルの瞳に映ったその時の彼女と来たら、燦然と彼女のオーラは輝きを増し、とても不思議な光彩と輝きを持っていました。彼は思わずほうっと息を吐くとその彼女の彩なす光にぼーっと見惚れてしまいました。
そんな我を忘れたまま佇むミルに、彼女は何事も無かったように追い越していく時、
「落ちこぼれさんは彼等に、どんな反撃をするんでしょう。」
彼女は皮肉っぽくっそう言うと、やはりポカンとした儘の彼をその場に残し、面白そうにくくくと含み笑いをしながら嫣然として悠々と去って行ってしまったのでした。
くわぁくわぁ…
寝床に戻るこの星の濃い紫色をした中型の鳥が、鳴きながらやはりミルの頭上を通り過ぎて行くのでした。
「鳥でさえ僕の事を馬鹿にしているのか。」
人の途絶えた道路上で、そう悔しそうにミルは言い捨てると、
『次回のレポートではきっと1位を取ってみせる、次回で無理ならその次でも、その次が無理ならその次の次でも。きっとあの娘(こ)や、あの子供達より上の成績になってみせる。』
「彼等を追い越して、彼等より遥かに上位の成績を修めてみせる!」
僕の成績で、きっと皆やあの娘の顔を曇らせて見せる。ミルはもう日が落ちようとするこの星独特の夕暮れ、頭上の朱鷺色の空を見上げながらこう決意すると溢れ出ていた彼の涙に誓うのでした。
直ぐに朱鷺色は赤い部分の赤味を増し、やがて赤い色は紫色となり、濃い黒みを帯びた群青色へと変わると、空には漆黒の闇が覆い被さって来るのでした。この星はとっぷりと夜の帳に覆われました。