Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 16

2019-03-15 15:55:20 | 日記

 「そんなに気を使う事は無いんじゃないか。」

副長のチルの言葉に、下士官のミルは、そうはいってもと不服そうに言葉を返しました。

 ここは宇宙船の自由研究室。宇宙船の全ての乗組員がその勤務の空き時間に、思い思いの研究が自由に出来るようになっている場所です。ミルは今、やはり自分の自由時間を使って地球人の男性から紹介された本を手に、その本の中に書かれていた1つの実験をしようとしているところでした。彼は勤務時間外の気楽さで副長のチルに話し出しました。

「僕の学問の手助けをしてくれると言うんです。」

へーっと、副長のチルは半ば呆れ返って嘆息の声を出しました。

「だってお前、そんな本の内容なんかとっくのとうの昔に理解できているだろう。」

今更そんな幼い科学や物理の本なんか見てどうするんだい。いかにも時間の無駄じゃないか。そう言うチルに、ミルは言葉を返しました。

「幾ら初歩的な知識だと言っても、この本返って結構難しいんですよ。」

それに案外面白いし。今は廃れてしまった学説なんかが載っていて、その間違った思考の発展もそうだなぁと頷けるものが有ったりして、念のために実験して検証しようかなと…。そんな事をチルに穏やかな笑顔でミルは語り続けます。

 「そんな事より本来の任務、地球人女性との交際はどうなったんだい。」

チルはミルの言葉を遮ります。

「早々に結果を出して、リポートにまとめてくれないか。」

艦長だってミルの方の進行具合は如何なったのかと、僕の方に問い合わせが来るんだからね。副長のチルは表情を引き締めると、やや怖い顔をミルに向けて上官らしく下士官のミルに語調を強めて注意したのでした。 


親交 15

2019-03-15 15:07:11 | 日記

 そんな風に紫苑さんが去って行く後姿を、街路樹の欅の影からそっと覗いて見ている1人の人物がいました。それは彼を見守る鷹夫ことミルでした。

 やっぱりねと彼は思います。彼は紫苑さんが必ず自分の身上調査をするだろう事や、彼の設定している大学にまで確かめに来るだろう事を予想していました。

 「カリキュラム迄尋ねたそうだけど、一体どうするんだろう?。」

この頃のミルは未だ紫苑さんの元教授という経歴を知らないでいました。ミルが紫苑さんの身の上を尋ねなかったのと、紫苑さんが自分の身の上については特に彼に語らなかったせいでした。ミルは紫苑さんが立去った大学の窓口に後から姿を現すと、紫苑さんが今何を訊いたのかと尋ねたのでした。

 「何だかっ自分が知っていた人に似ていた人みたいだったので。」

と、笑顔のミル。彼も紫苑さん同様、窓口の人に適当に質問理由をでっち上げたのでした。親切な事務の人は手短に紫苑さんの話の内容をミルに話して聞かせると、にこやかに付け加えました。

「気の良いお知り合いね。」

ここで良い人と知り合ったのね。と目に悪戯っぽい笑いを湛えて優しく言うのでした。この時、事務の女性は、紫苑さんが元教授だという事をミルには伏せておきました。彼女は後のお楽しみという感じでミルに悪戯っぽく隠しておいたのでした。

 その為、ミルは後日何時もの図書館で、机に座っている自分の目の前に紫苑さんが何冊かの本を山と積み上げると、これこれと話だし、かくかく云々で自分は君にアドバイスしてあげられるよと、にこやかに親身になって声を掛けて来たので、殊の外意外に思いました。机の向こう側に立っている紫苑さんを見上げた彼は、目を丸くして驚く事になったのでした。

「紫苑さんが、元は大学の教授だったとは。」

『お釈迦様でも気が付くまい。』か、と、にんまり笑った紫苑さんは思いました。

 


今日の思い出を振り返ってみる

2019-03-15 15:04:57 | 日記
 
土筆(18)

 程無くして遠くで小競り合いをするような子供の声が聞こえて来ました。皆の所からは見えなくなった施設の建物の向こう側の場所のようです。場所が遠いせいか耳を澄ませても話の内容が私にはよ......
 

 うらうらとした良いお天気です。