Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 5

2019-03-02 12:04:09 | 日記

 青年はそのまま透明なガラス扉を押すと、何事も無かったように館内へと消えて行きました。蛍光灯に晒された図書館の狭い玄関内には紫苑さん1人となりました。彼はほうっと詰めていた息を吐き出しました。

 『世の中いろいろあるからなぁ。』

図書館から出て来ると、彼は目の前の道を左に取り、図書館の建物が建っている公園内部に向かう散策コースへと向かいました。公園内をふらふらと当てもなく散策し始めた紫苑さんは、気に入っている石碑のある場所へ歩を向けました。ぽかぽかとした日差しを顔に受けながら、彼は道々あれこれと今の一件を考えていました。

 『何かの詐欺に出合う所だったのかもしれない。』

人の好さそうな青年だったがなぁ、ああいうタイプが危ないのかもしれない。そんな事を考えてみました。石碑の前に来て、彼は近くの日当たりの良いベンチに腰を掛けました。ぽかぽかと背中に当たる日差しが心地よく、もう春だなぁと嬉しく感じました。辺りには時折、同じように早春の日差しを愉しむ散策者が、ゆうるりとにこやかに歩んで行きました。

 「また暑い季節がやって来るなぁ。」

夏の海、強烈な太陽に眩く輝く世間、半袖シャツ、麦わら帽子等々、目の前に浮かんで来ると、彼には連想的にお盆の墓参りの場面が目に浮かんできました。ふぅ、彼は溜息を吐きました。地面に目を落とすと、芝生の枯れ草に混じった細かな緑がくっきりとした形を取り、1つ1つが彼の目に入って来ます。それはしみじみとして目に浸みて来るようです。

 すぅっと彼の心に隙間風が吹きました。冷え冷えとした孤独感が彼を捉えたのです。ベンチに1人腰かけた彼の脳裏には、細君と過ごした過去の色々な場面が走馬灯のように浮かんで来ました。


親交 4

2019-03-02 11:38:45 | 日記

  すると、彼の背後から玄関ドアを開けて入ってきた人物がいました。紫苑さんはその気配に気付くと、反射的に振り向きました。

「こんにちは、よいお天気ですね。」

快活な明るい男性の声でした。紫苑さんは入ってきた人物の顔をしげしげと眺めました。玄関屋内の蛍光灯に照らされた相手の顔は柔和な笑顔を湛えた青年の顔でした。

 『はて、見たことのない顔だが、何処かで出会ったことがあったかしら?』

紫苑さんにはどうにも見覚えのない青年の顔型でしたから、一瞬うんとは頷きながら、見ず知らずの人間からこう親し気に声を掛けられるという事が不審に思えて、彼は用心して妙な顔つきをすると、声を掛けて来た青年に尋ねてみるのでした。

「何処かでお会いしましたかな?」

「歳のせいかもしれませんが、私はあなたの顔に全く見覚えがないですよ。」

そんな事を言って、相手の青年の出方をそれとなく注意して眺めていると、青年は紫苑さんの作った酷く面妖な顔付にもかかわらず、やはり快活に愛想よく返事をして来ました。

「自分はあなたとは初対面です。」

 『ちょっとおかしいのかな?』、紫苑さんは思いました。彼は半歩ほど身を引くと、更に用心して相手の顔付や仕草等、その目の前の男性の雰囲気を推し量るように窺うと、これ以上この青年と関わり合いにならないようにしようと判断し、自身の身を壁側の脇に寄せ、

「図書館へ御用なんでしょう、ささどうぞ。」

と、相手が閲覧室に入りやすい様に通路を開けて、若者を先に通してやるのでした。そして、『やはり今日は散歩の方に切り替えよう。』と決心すると、館内に入るのをこの場で取り止めてしまいました。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-03-02 11:35:32 | 日記
 
土筆(4)

 初日、一旦家に戻った子供達は昼食後に出直します。怪我の手当てをしたり、着替えたりして仕切り直しです。お日様が暖かく降り注ぐ元の遊び場に戻って来ました。 皆何となく今迄と違うと......
 

 今年は暖かいです。でも、考えてみると、昔の3月もこんな感じで冬の寒さの弛み、春の到来を感じた物でした。

今日は新しい作品の方も第4話です。1年前と揃いの回数になり微笑んでしまいました。