本当にこの星の住人は感情が複雑だなぁ。目の前の地球人の年嵩の男性、その彼の目まぐるしいオーラの色の変化に、鷹夫こと異星人のミルは思わず溜め息を吐いてしまいます。
「如何したのかね?」
興味深い目と笑顔を顔に湛えて、尋ねて来た地球人の男性に「いえ、何でも。」と、ミルは答えて微笑みました。
「少し疲れたんです。」
彼は自分に課された課題を熟す為に集めた資料が膨大となり、問題が益々山積みとなって仕舞った旨を、正直に目の前の男性に語るのでした。
「それは大変ですな。」
気の毒そうに地球人の男性は言うと、立ち話もなんだからと、ミルを図書閲覧用の机と椅子の置いてある方向へと誘います。ミルも同意して、2人は並んで移動すると空いている椅子に腰を下ろしました。ここで、『そう言えば、』とミルは気付きました。この地球人のオーラを読む事ばかりに気を取られていたので、自分は未だこの地球人の男性の名前を聞いていなかったと気付きました。それで彼の名前を尋ねてみる事にしました。
「失礼ですが、お名前は何と仰るのでしょうか?」
ミルはそう問いかけてみます。男性は一瞬渋い顔をしましたが、すぐにその表情を引っ込めると表面穏やかな顔をして澄まして答えました。
「鷲雄です。」
「いやぁ偶然、わしおとたかお、似通った名前で迷コンビという所ですかな。」
地球人はハハハと笑い。つい大きな声になって仕舞った彼は周囲の人々から冷ややかな視線を浴びたのでした。