Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

卯の花3 67

2020-11-06 09:53:15 | 日記
 この世界に生まれ出て未だそう間もない私だもの。この世を長く過ごして色々な経験を持った大人の祖父や父、他の我が家の家族やこの世の中の様々な人々は、当然こういった祖父の物言いや遣り取りに、さも当然、当たり前の様に何かを察する事が出来るのだろう。

 そう考えると私は、階段の上で1人疎外感を覚えるのだった。私というちっぽけな存在は、この世で未だその生活に馴染め無い。私はぽつんとした塊のような個としての自分を感じた。私の目の前に存在する、水の流れる様な流体として感じる世界、この世での流れの中で、様々な経験を経て、この水の流れに慣れ、馴染み、すっかり溶け込んで、流体の中に違和感なく存在している祖父や大人の人々を感じると、私はその未だ塊として溶け込んでいない自分と、無常な世の流動的な強者達、今その代表として私の目の前にいるのは祖父だが、その差や隔たりを、私は自分の目の前の祖父との空間に感じ取った。何時しか私の胸の内には虚ろな洞窟が穿かれ、そこに吹き込む清涼感を私は1人感じていた。私は階段の木の板の上に腰かけているのだ。己が尻の下の材質を感じその木肌を想像しながら、私は1人この階段に腰かけている自分の姿を連想した。

 「お祖父ちゃんは、この世に馴染んでいるね。」

私はおずおずと言った。

「私は未だこの世に馴染んでいないから…。」

自分でも自分の言いたい事がよく分からなかった。自分は何を祖父に言いたいのだろうかと思った。

『私は何が言いたいのだろうか?。』

そう自ら自問した。