Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(138)

2018-07-24 09:36:49 | 日記

 自分でもどうにかしたらいいと思うがなぁ。と祖父は溜息交じりで呟きました。

   さて、次の世界への道すがら、2人は今まで居た世界の事について話し出しました。

「あんな世界もあるんだなぁ。」

光君が言います。

 これといって傑出した人物が誰も存在しない世の中なんて、あるんだなぁ。あれでよく文明というものが成り立っているよな。歴史上の主だった大人物が誰もいない世の中なんて、それどころかじっちゃんみたいなやり手もいなければ、僕の様に出来物と称される奴もいないなんて…。いや、実際驚いたよ。碁盤の面の上に同じ碁石が整然と並んでいる気がしたよ。

  「 しかし、文明の利器は有ったじゃないか。」

と祖父。

   電話なんかの通信機器や、電化製品も私はちらほら見たよ。流石にテレビは目にしなかったが、ラジオは見たな。一応飛行機もちゃんとあったじゃないか。発明した人がいるという事だ。

   今あとにしてきた世界がいたく気に入っていた祖父は、その世界をなにかと擁護してみるのでした。

「自転車もあって快適な世界だったよ。」

微笑みながら彼は言いました。

   そんな祖父に光君は穏やかに笑顔を向けると、実は僕は研究室の主だった顔ぶれの実家を見に行って来たのだと告げました。

「誰もいなかったんだ。彼等の姿形どころか、彼らの家も何も、親兄弟や親戚に至るまで、全然、全く、彼等が存在した形跡というもの自体がまるで無かったんだ。」


七夕祭り

2018-07-23 12:32:05 | 日記

   私達の地域にも七夕祭りがあり、毎夏楽しみにしていたものです。

   ふだん着ない浴衣を着て、夜店や歩行者天国、イベントに参加しました。学校時代はもちろん、子供達が小さな頃にも毎年出かけていました。近年は出掛けなくなりましたが、夏祭りというとこの七夕祭りが1番に浮かびます。


土筆(137)

2018-07-22 07:58:19 | 日記

 しかし、光君は全く慌てる気配も無く、感情的になっている祖父を宥めに掛かりました。

   まぁまぁ、…

今の世の中、自分1人だけ研究室にこもってガリガリ研究してるなんて事無いんだよ。大抵は研究室で同じ研究をしている仲間が集まって、何人かでグループになって協力して研究しているんだ。たまたまある朝僕にこの理論が閃いて、皆に先んじてこの方法を発見したから、嬉しい勢いのままに先ずは自分がと、彼等に先んじてやってみたんだよ。

   丁度じっちゃんも家に来ていたから、この機会に僕の研究の成果をみせるいい塩梅だと思って、一緒にとお供に連れて来たんだよ。昔からの憧れだっただろう、じっちゃん、タイムトラベルは。

   その内研究室の皆も僕達に追いついてくるさ。それに、後輩達の方が僕なんかより余程優秀な奴が多いんだ、置き手紙やメモ書きも置いてきてあるし、全然、彼等を当てにしていていいよ。

   孫のこの余裕のある言葉と態度に祖父はややホッとしました。が、万事人任せな孫の態度はやはり気になるのでした。

「お前より?当てになるのかい?その後輩達とやらは。」

彼は横目で孫の顔付きや様子を眺めながら現状を推し量ってみます。昔気質なせいでしょう、何事も自分自身で執り行わないと気の済まない質の彼にすると、この今の他人任せの窮状がどうにも不安で仕様がないのでした。

 

 


土筆(136)

2018-07-21 11:58:50 | 日記

 「考えというか、…」

と、彼は口籠りました。彼のこれから言い出す答えが祖父には気に入らないだろう事は、彼には前以て想像がついていました。

「…これから先は、僕と同じ研究室の優秀な後輩達頼みなんだ。」

「彼等がこの先の僕の理論を考え進めて、僕達を此処へ迎えに来てくれるのを待つしかないんだ。」

そう彼が答えると、祖父は顔を真っ赤にして激怒しました。

「おい、それじゃあ、全く人様任せなのかい。」

呆れたねと、祖父は怒りに任せて孫に食って掛かりまた。

 「恥ずかしい!、恥ずかしいと思わないのかね、帰り道も分からない散歩に出て、迷子になったら迎えに来てくださいと、あなた任せで持てばいいだなんて…」

「この馬鹿者!」

と、祖父は孫の光君を怒鳴りつけました。


土筆(135)

2018-07-20 09:54:25 | 日記

 「光。」

祖父が孫の名を呼びました。

「もういい加減、自分達の世界に戻らないか?」

彼は自分の孫に帰宅を促しました。

「お前が発見した理論の実験や検証もいいけれど。私は段々疲れて来たよ。」

家を出てから何日になる?と、彼は孫に尋ねました。

「さあなぁ。」

と孫。彼は祖父のこの手の質問に対しては毎回曖昧な返事と態度で臨んできます。

「お前、もしかしたら帰れないんじゃないのかい。」

事ここに至って、到頭祖父は聞き難かった質問を彼に対してしてみる事にしました。すると彼はふふんと鼻で笑うと自らを嘲るように、

「まぁ確かに、帰宅の目途はまだ立っていないんだ。」

と答えるではありませんか。

「でも、心配する事無いよ、尋ねて回るこの世界は奥が深いからね。」

事も無げに重大な事を言う彼に、祖父は呆気にとられました。「帰宅の目途が立っていないんだって…」よくそんな旅に自分の祖父を連れだしたものだ。彼は自分の孫の無責任さに呆れ、少々腹が立ってきました。

「出来物のお前の事だから、何か考えが有るんだろうけれど。」

少々無謀な旅行というものだ。私は疲れて来たよ。と、苦言を呈するのでした。