自分でもどうにかしたらいいと思うがなぁ。と祖父は溜息交じりで呟きました。
さて、次の世界への道すがら、2人は今まで居た世界の事について話し出しました。
「あんな世界もあるんだなぁ。」
光君が言います。
これといって傑出した人物が誰も存在しない世の中なんて、あるんだなぁ。あれでよく文明というものが成り立っているよな。歴史上の主だった大人物が誰もいない世の中なんて、それどころかじっちゃんみたいなやり手もいなければ、僕の様に出来物と称される奴もいないなんて…。いや、実際驚いたよ。碁盤の面の上に同じ碁石が整然と並んでいる気がしたよ。
「 しかし、文明の利器は有ったじゃないか。」
と祖父。
電話なんかの通信機器や、電化製品も私はちらほら見たよ。流石にテレビは目にしなかったが、ラジオは見たな。一応飛行機もちゃんとあったじゃないか。発明した人がいるという事だ。
今あとにしてきた世界がいたく気に入っていた祖父は、その世界をなにかと擁護してみるのでした。
「自転車もあって快適な世界だったよ。」
微笑みながら彼は言いました。
そんな祖父に光君は穏やかに笑顔を向けると、実は僕は研究室の主だった顔ぶれの実家を見に行って来たのだと告げました。
「誰もいなかったんだ。彼等の姿形どころか、彼らの家も何も、親兄弟や親戚に至るまで、全然、全く、彼等が存在した形跡というもの自体がまるで無かったんだ。」