土筆(56)
「成る程、あの人がね、それでその子が。…それで、…。その子、あの子の事は何て言っているの?。」そう言う声が聞こえた後、私には、「…へーえ…」という従姉妹の声や、振り返って目を......
連休初日です。のんびりとしています。
土筆(56)
「成る程、あの人がね、それでその子が。…それで、…。その子、あの子の事は何て言っているの?。」そう言う声が聞こえた後、私には、「…へーえ…」という従姉妹の声や、振り返って目を......
連休初日です。のんびりとしています。
その後彼は祖父に抱えられて自室に戻ると、再び前後不覚に陥りばったりと寝床に倒れ込み、そのままの姿勢でグァー、グァーと、寝息も荒く眠り込んでしまいました。彼がこんなにも深くぐっすりとした安眠を取る事が出来たのは、この星の二日酔いの特効薬、祖父が前以てこっそり用意しておいてくれた、新鮮な木の実のジュースが効果を奏していた事は言うまでも無いのでした。
「あの2人、結婚したの⁉」
翌日、朝食の時になって、やっと普段の状態に戻ったミルが祖父と同じテーブルに着いた時のことです。祖父の話してくれたこの星の近況や四方山話に、彼は突然、突拍子もない大声を上げました。
『信じられない。』
ミルは思いました。「驚いただろう。この星の皆もそうだったんだよ。」祖父はミルが驚いたので、如何にもしてやったりという顔つきになると極めて上機嫌になりました。
2人が仲良く連立って歩くようになった初めは、ほれ、あの何時ものこの区域の収穫祭の時だよ。その日2人は仲良く笑って手を繋いでいたよ。最初から2人で皆の前に現れたんだよ。2人は地域のバザールの通りをその儘臆面もなく歩いて行ったよ。そんな2人を、地域の皆は開いた口が塞がらないという顔をしてずっと眺めていたよ。私も最初そうだったんだが、何時の間にかそんな皆の顔を見ているのが面白くなってね、皆の顔ばかり眺めていたよ。私は2人共ほんの小さな頃から知っていたからね、何となく、やっぱり!という気もしたものさ。
祖父は目を細めて遠い所を見る様な顔付になりました。それから彼が回想した記憶をミルに話してくれました。祖父の話によると、ミルの幼馴染であり結婚した2人は、ミルがこの星に現れる前からかなり親しかったのだという事でした。
「初等教育以前の2人は、よくこの裏山で転げ回って遊んでいたものさ。」
そんな仲良しの2人を見て、よく祖母ちゃんも笑って「あの2人は将来結婚するね。」と言っていたよ。祖母ちゃんの言う通りになった。祖父は満足げな微笑みを満面に浮かべるのでした。裏山での2人は幼い頃の私と祖母ちゃんの様だったなぁ。祖父はほうっと溜息を吐くとやや顔が曇りましたが、すぐに穏やかな微笑みをその顔に浮かべました。ただ『過ぎた物は帰らない…、さ。』そう祖父は内心諦めの溜息を吐いていました。
土筆(55)
この言葉に、彼の方は泣いている従姉妹に向かって歩い行くと二言三言小声で何か言っていましたが、それ以上誰に何言うという事も無く、争う気配も全く無く、何事も無かったように私達の側から......
人の世の初めの頃かな。仲良き事は美しきかな。右を向いても左を見ても、さっぱり訳の分からない頃かな。
故郷について2日目の昼過ぎ、ミルは激しい頭痛と共に目覚めました。これは…⁉
「二日酔いだ!」
ミルは言葉を吐き出しました。
彼は頭を寝床に押し付けた儘、折角の休暇だからもう少し寝ていようかなと考えたのですが、堪え切れない程の頭痛は一旦臥せった彼の身をゆうるりと起こさせました。その後彼は如何にかこうにか立ち上がり、よろよろと台所へ進んで行くと、運よくこの星の二日酔いに効くという木の実のジュース、白濁したその液体がグラスに満々と満ちているのを見つけると、その場に座り込み這う這うの体で飲み干しました。
「おや、起きられるのかい?。」
すぐに祖父がミルの背後から声を掛けました。
「昨日あれだけ飲んだんだから、今日は1日寝ていたらどうだい。」
まだまだ休暇は有るんだろう。祖父はそう言ってニヤニヤ笑いながらミルの顔を覗き込むと、床に座り込んでいる彼の孫の事を気遣ってその肩を摩りました。まだまだお前には負けないなぁ。祖父はいかにも可笑しくて仕様が無いという風にははははは…と声に出して笑ってしまうのでした。
「酷いなぁ…。」
呻くようにそう答えながら、頭痛のせいで半ばぼんやりとした思考しかできないミルは、お祖父ちゃんは元気なの?と聞くのがやっとでした。
「平気だよ。」
孫の問いにそう答える祖父の頑とした屈強さに、彼はぼうっとした顔をしながら驚き呆れてしまいました。
土筆(54)
「…ちゃん、そんな物見てたんだ‥。」従姉妹は放心したようにふんわりそう言うと、口に手を当てました。暫くして急にお腹を押さえた彼女は、「うくく…」と、腹痛に苦しみ出した様子です......
もうすぐに連休入りですね。「ありがとう平成! おめでとう令和!」 の御代替わりがやって来ます。