ワックス(床のつや出し薬剤)を塗ったばかりの床、畳半畳ほど太陽の光
がくっきりと映えています。 そこへ掃除機の先端を入れようとして? 床が、
否、床の表がゆらゆらしています。 光の縞模様がゆらいでいるのです。
陽炎、歳時記に「遠方のものが揺らいで見える現象。科学的にいえば、直
射日光で地面が熱せられ、空気の低層に温度差が生じ、その空気の濃度が
不規則となるため通過する光が不規則に屈折させられる」とあります。
遠方どころか、足元に見える揺らぎで、ガラス戸を開いて空を見上げても、
ただ青い空間だけが広がっているだけです。この空間が揺らいでいるのか、
空を見上げているだけではとても分かりません。 ワックスで磨きあげたばか
りだからこそ目にしえたのでしょう。 そして、わずか10分ほどの間には、も
うなんの動きもない木目のきれいな床になっていました。
子の手引く聖母像の苑陽炎へり 清蛙