春の灯というには少し早いのかとも思いつつ、灯の下で目をつぶると、眼
裏に金粉の如く広がるものがあります。目をつぶっているのですからこれを
「金粉のようなものが見える」とは言えないでしょう。それに「瞼を閉じれば
恋しい故郷の山が浮かんでくる」などという類のものでも無いのです。
金ばかりではなく銀も広がっています、金銀入り混じって実物ではまったく
縁のないものを目(裏)一杯に広げているのです。やはり春は良い季節です。
秋の黄金は目をあけて、春はまな裏金と銀。
春の灯の金粉まな裏銀の皿 清蛙
昼の陽の下の波も、まさに「のたりのたりかな」の揺らめきと波頭は銀色の
崩れの重なりです。波の揺り立つ量感は、厚みを帯び粘りさえ感じられます。
春の波竜宮入口艶やかに 清蛙