パヴァロッティのドキュメンタリー映画を見てきました。興味はあったのですが、イタリア語とベルカントでご一緒しているSさんもいらっしゃるというので調べたらもう今週で終わり。行けるうちにと今日待ち合わせて一緒に見ました。ベルカントの安藤先生もいつも横隔膜と言葉の大切さを話していますが、ここでも発声法のことも出てきます。
パヴァロッティといえば大きなハンカチを持って、大きな体で楽々歌う人と思っていましたが、センシティヴで苦悩と努力の人でした。ホセ・カレーラスと同じように小さなころ命を落としかけているので、そこからポジティブにまっすぐ生きて行くようになったとのこと。
音楽家が1曲歌うのはそれまでの全人生を捧げているのと同じことというボノの言葉。長い間オペラを離れて戻った時の酷評に対してわかっていないと話していました。
神からいただいたものを神に返すと話すパヴァロッテイ、それが人のために役立たせることから、ダイアナ妃との出会いによりチャリティの世界にも入って行きます。ダイアナ妃との友情も知りませんでした。音楽を愛し、娘や妻を愛し、女性も愛し、友を愛したその温かい人柄と美しい声にあふれる感動の映画でした。家族といっしょの時間をあまり持てなかった家族にとっては神の使命を持っていることは不幸なことでもありましたが、晩年にはその絆も取り戻していてよかったと思いました。娘さんがお父さんの音楽を聴いていると満たされると語っていましたが、本当にそういう空気に包まれるのが音楽です。
彼にも苦しい時期が何度かあり、オペラ道化師と重なってくるところは涙が出てきました。苦しくても仮面をつけて明るく振る舞う・・・ これはまさに三浦春馬と完全にダブります。エンターテイナーの宿命なのでしょうか・・ ロック歌手との共演や子供以上の年齢差のある女性との恋などで理解をされない晩年でしたが、信じる道を進んで行き、音楽の楽しさ、人を愛すること、恋をすることの素晴らしさを表してくれました。
この映画では音楽のこと、彼の人生そのものと2つの柱でできていましたが、人生についてはあまり知らなかったので、その人柄に触れ、ますます彼の音楽が好きになりました。
ラストの「誰も寝てはならぬ」は圧巻でした。こんなに感動した「誰も寝てはならぬ」はありません。トリノオリンピックでも歌っていましたね。パヴァロッティの人生と重なり、響きあいました。最後まで涙があふれていました。公開は今週の8日までなので見たいと思っている方は慌てた方がいいです。すべての人にお勧めしたい映画です。
<劇中に登場する、パヴァロッティ歌唱楽曲>プッチーニ「ラ・ボエーム」 / ドニゼッティ「連隊の娘」 / ヴェルディ「リゴレット」/レオンカヴァルロ「道化師」/ プッチーニ「マノン・レスコー」 / ディ・カプア「オ・ソレ・ミオ」 / プッチーニ「トゥーランドット」 / ドニゼッティ「愛の妙薬」 / プッチーニ「トスカ」ほか多数・・・
<オペラ・クラシック・・・音楽界の錚々たる登場人物>ボノ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、アンドレア・グリミネッリ、アンジェラ・ゲオルギュー、キャロル・ヴァネス、ヴィットリオ・グリゴーロ、マデリン・レニー、ズービン・メータ、ユージン・コーン、ランラン ほか多数・・・
- 監督
- ロン・ハワード
- キャスト
- ルチアーノ・パヴァロッティ、ボノ、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ
- 作品情報
- 2019年/イギリス・アメリカ/115分
ダイアナ妃との友情
三大テノールは白血病から生還したカレーラスを元気づけるためにサッカー好きの3人が集まって試合の前に歌を歌うところから始まった。
最後に愛した女性と女の子を残して71歳で亡くなったパヴァロッティ。なんと誕生日が私と同じ日でした。
『パヴァロッティ 太陽のテノール』
<神の声>を持つイタリアの国宝、ルチアーノ・パヴァロッティ。あなたがはじめて出会う〈人生を愛する天才〉至福のドキュメンタリー!
聞けば誰もが虜になる歌声を持つルチアーノ・パヴァロッティの初ドキュメンタリー映画が完成した。『ラ・ボエーム』『トスカ』などの絶頂期のパフォーマンスや、『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」をはじめとする名曲を3大テノールで競演した伝説のステージ、故ダイアナ妃との交流やボランティアなどの幅広い活動、家族とのプライベートライフなど貴重な映像から伝わるのは、歌唱力より高い人間力。
さらに、新たに撮られた23人のインタビュー映像では、U2のボノがパヴァロッティのアーティストとしての信念を証言し、マネージャーやエージェントがショービジネスの裏側を明かし、前妻、最後の妻、3人の娘たち、そして愛人は欠点が同時に魅力だった素顔を告白、生きることのすべてを全力で愛した男の輝かしい日々が浮き彫りにされる。
これだけの言葉を引き出したのはアカデミー賞に輝く巨匠ロン・ハワード監督。ハイCと呼ばれる高音を軽々と出す並外れた音域と力強く芳醇な声量による、〈人類史上最高の歌声〉をアカデミー賞録音技師を迎え、最新技術でスクリーンに蘇らせた。太陽のようにまばゆい歌声と笑顔で、いつのまにか人生を楽しむ術を伝授される、至福の体験をあなたに──。
今数日間ですが、IL Volo の10周年記念コンサートの映画をやっていることを知りました。また来年の1月から三大テノールの映画も公開の予定です。3大テノールは興業の商業主義的なところが見えて実際に入ったことがありませんでしたが、この映画は見てみたくなりました。
11月のホセ・カレーラスのコンサートは実現するのかどうかヒヤヒヤです。
Oct. 5 2020 Shibuya