碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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北海道から届いた“お宝”

2008年11月14日 | 本・新聞・雑誌・活字
札幌の、なじみの古本屋さんで買った本が、宅配便で届いた。ほんと、便利だ。宅配便の開発者に感謝。

この日は、いつも必ず”私にとってのお宝”が見つかる店先の格安ワゴンで、大量の古いポケミス(ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック)を発見した。その中からエド・マクベインの<87分署シリーズ>を選んで購入したのだ。数えてみると39冊あった。

嬉しかったのは、39冊の中に、ずっと欲しかったNO.575「キングの身代金」があったことだ。しかも昭和35年に出た初版(!)。中身も48年前の本とは思えない美しさだ。

よく知られているように、黒澤明監督の「天国と地獄」の原作である。原作とはいっても、丸ごとシナリオ化されたわけではなく、映画では様々な、しかも見事なアレンジが施されている。

とはいえ、「キングの身代金」を読み直してみると、三船敏郎が演じた製靴会社重役の状況、住み込み運転手の子どもが“人違い”で誘拐されるなど、骨格はそのまま映画に移植されていることが分かる。

しかし、まあ、そんなふうに映画との違いを探すのも面白いが、それよりエド・マクベインお得意の風景描写や、スティーヴ・キャレラやマイヤー・マイヤーなど刑事たちの取り組みと人間臭さを、素直に堪能したほうがいい。

それにしても、このポケミスたち、どんな人が集めていたんだろう。本の状態から見て、同じ人のコレクションだ。

大事に保存してきたコレクションを、今度はなぜ、手放したんだろう。引越し? いや、本好きは、ましてやポケミスファンは、どこまでも持っていくはずだ。

昭和30年代からポケミスを読んでいたとすれば、今はそれなりの年齢のはず。うーん、もしかしたら、持ち主が亡くなってしまい、遺族が処分したのかも・・・とかなんとか、妄想してしまうのも古本ならでは。

札幌では、87分署だけではなく、昭和29年の清沢洌「暗黒日記」ダイジェスト版(東洋経済新報社)や、初版から4年後の昭和16年12月(パールハーバー!)に出た川端康成「雪国」(創元社)なども入手した。

こういう本たちを手に取ると、歴史というか、その時代に触れたような気がしてくる。これもまた古書の楽しみの一つだ。

キングの身代金 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-11)
エド・マクベイン
早川書房

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暗黒日記〈1〉 (ちくま学芸文庫)
清沢 洌
筑摩書房

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雪国 (新潮文庫 (か-1-1))
川端 康成
新潮社

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