映画『ハッピーフライト』を見た。
この作品を楽しみにしていた理由は3つある。
まず、「飛行機ムービー」であること。航空ファン、飛行機好きとしては、とにかく画面の中で飛行機が飛んでいるだけで嬉しいのだ。今回はANAの全面協力だし、相当“飛んでる”映画に違いないと期待した。
2番目の理由。「矢口史靖(やぐち・しのぶ)監督作品」だったから。矢口監督の映画は、97年の『ひみつの花園』(この作品で女優の西田尚美さんに注目した)以来、ほとんど見ている。
そして3番目は、この映画に「俳優・森岡龍が出演」しているからだ。龍くんは、家が近所だったし、我が家の娘と同い年だったから、幼稚園、小学校時代を知っているのだ。その後、映画やCMに出るようになって、ずっと応援している。今回は「若手のドック整備士」で、なかなか大事な役だ。
以上の私的ポイントがあったわけですが、映画は十分楽しめた。
ボーイング747-400はぶんぶん飛んだし、龍くんは大健闘していたし、映画全体はヒット作『ウオーターボーイズ』よりも、ある意味で矢口監督らしかった。
矢口監督は脚本を書くために、きっとかなりの取材をしたのだろう。旅客機が一機飛ぶために、その背後で、どんな人たちが、どんなふうに仕事をしているのか、またトラブル発生時にはどう対処していくのかが、よーく分かる。
旅客機の乗務員、グランド、整備関係、レーダー室、コントロールタワーなどが、それぞれの“ドラマ”をもっていて、それをちゃんと描いてくれている。
もちろん、「各所をちゃんと描く」のは、そもそもこの作品の狙いなんだけど、見ていて少しだけじれったくなったりもする。
まあ、多少の「じれったさ」があるからこそ、物語がドンッと動いたとき、そのスピード感が気持ちいいわけです。
私が見たとき、館内はやや空いていた。そうすると、困るのが、笑えるシーンだ。私は可笑しくて笑い声が出そうなんだけど、観客が少ない上に、みんな割りと冷静(?)で、声に出して笑ってくれないのだ。
せっかくの<ユーモア航空トラブルトラベルムービー(?)>。映画館では、笑えるときは、遠慮せず笑いましょう。
さて、以下は、2005年4月に雑誌広告のページに書かせていただいた“飛行機エッセイ”です。
旧友ボーイング767
3年前から北海道・千歳にある大学で教えている。ただ、東京でもいくつか授業があり、毎週、東京と北海道を往復する生活だ。「大変だね」とよく言われるが、子どもの頃からの航空ファンなので、この〝飛行機通勤〟自体がとても愉しい。
羽田―千歳の路線で使用される旅客機は、大型のボーイング747(ジャンボ機)や最新型の777が多い。だが、私が好きなのは767だ。定員が300名に満たない中型機で、その大仰でない気軽な雰囲気が通勤にはちょうどいい。
20数年前、コンピュータ制御によるハイテク機として登場した767。その開発プロセスを追うドキュメンタリーで、シアトルにあるボーイングの工場を長期取材した。手作業のリベット打ちから過酷な耐用実験までを見るうち、飾り気はないが実直な人柄(?)の767に好感を持つようになった。
当時、この新鋭機を日本で最初に導入したのは全日空である。私たちは完成したばかりの一番機を日本へ運ぶフライトに同乗し、取材を続けながら帰国することになった。工場内の滑走路を飛び立った767は、アンカレジを経由して羽田を目指した。
途中、千島列島の南に差し掛かった時のことだ。「ソ連のミグ(戦闘機)にでも遭遇したら危ないなあ」と言って機長が笑った。当時、全日空はまだ国内専門で、国際線にデビューしていなかった。翼に描かれた見慣れぬANAの文字。他国の戦闘機に「怪しい奴」と思われたら大変、というジョークだったのだ。
今でも767に乗るたび、旧友に出会ったような懐かしさと安らぎを覚える。地上を離れた途端、爆睡するのはそのせいか。いや、乗り越しの心配がないだけかもしれない。
この作品を楽しみにしていた理由は3つある。
まず、「飛行機ムービー」であること。航空ファン、飛行機好きとしては、とにかく画面の中で飛行機が飛んでいるだけで嬉しいのだ。今回はANAの全面協力だし、相当“飛んでる”映画に違いないと期待した。
2番目の理由。「矢口史靖(やぐち・しのぶ)監督作品」だったから。矢口監督の映画は、97年の『ひみつの花園』(この作品で女優の西田尚美さんに注目した)以来、ほとんど見ている。
そして3番目は、この映画に「俳優・森岡龍が出演」しているからだ。龍くんは、家が近所だったし、我が家の娘と同い年だったから、幼稚園、小学校時代を知っているのだ。その後、映画やCMに出るようになって、ずっと応援している。今回は「若手のドック整備士」で、なかなか大事な役だ。
以上の私的ポイントがあったわけですが、映画は十分楽しめた。
ボーイング747-400はぶんぶん飛んだし、龍くんは大健闘していたし、映画全体はヒット作『ウオーターボーイズ』よりも、ある意味で矢口監督らしかった。
矢口監督は脚本を書くために、きっとかなりの取材をしたのだろう。旅客機が一機飛ぶために、その背後で、どんな人たちが、どんなふうに仕事をしているのか、またトラブル発生時にはどう対処していくのかが、よーく分かる。
旅客機の乗務員、グランド、整備関係、レーダー室、コントロールタワーなどが、それぞれの“ドラマ”をもっていて、それをちゃんと描いてくれている。
もちろん、「各所をちゃんと描く」のは、そもそもこの作品の狙いなんだけど、見ていて少しだけじれったくなったりもする。
まあ、多少の「じれったさ」があるからこそ、物語がドンッと動いたとき、そのスピード感が気持ちいいわけです。
私が見たとき、館内はやや空いていた。そうすると、困るのが、笑えるシーンだ。私は可笑しくて笑い声が出そうなんだけど、観客が少ない上に、みんな割りと冷静(?)で、声に出して笑ってくれないのだ。
せっかくの<ユーモア航空トラブルトラベルムービー(?)>。映画館では、笑えるときは、遠慮せず笑いましょう。
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さて、以下は、2005年4月に雑誌広告のページに書かせていただいた“飛行機エッセイ”です。
旧友ボーイング767
3年前から北海道・千歳にある大学で教えている。ただ、東京でもいくつか授業があり、毎週、東京と北海道を往復する生活だ。「大変だね」とよく言われるが、子どもの頃からの航空ファンなので、この〝飛行機通勤〟自体がとても愉しい。
羽田―千歳の路線で使用される旅客機は、大型のボーイング747(ジャンボ機)や最新型の777が多い。だが、私が好きなのは767だ。定員が300名に満たない中型機で、その大仰でない気軽な雰囲気が通勤にはちょうどいい。
20数年前、コンピュータ制御によるハイテク機として登場した767。その開発プロセスを追うドキュメンタリーで、シアトルにあるボーイングの工場を長期取材した。手作業のリベット打ちから過酷な耐用実験までを見るうち、飾り気はないが実直な人柄(?)の767に好感を持つようになった。
当時、この新鋭機を日本で最初に導入したのは全日空である。私たちは完成したばかりの一番機を日本へ運ぶフライトに同乗し、取材を続けながら帰国することになった。工場内の滑走路を飛び立った767は、アンカレジを経由して羽田を目指した。
途中、千島列島の南に差し掛かった時のことだ。「ソ連のミグ(戦闘機)にでも遭遇したら危ないなあ」と言って機長が笑った。当時、全日空はまだ国内専門で、国際線にデビューしていなかった。翼に描かれた見慣れぬANAの文字。他国の戦闘機に「怪しい奴」と思われたら大変、というジョークだったのだ。
今でも767に乗るたび、旧友に出会ったような懐かしさと安らぎを覚える。地上を離れた途端、爆睡するのはそのせいか。いや、乗り越しの心配がないだけかもしれない。