碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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元厚生事務次官殺傷事件の“いやなかんじ”

2008年11月20日 | 日々雑感
17日から18日にかけて起きた「元次官殺傷事件」は、まだ分からないことだらけだ。

私たちが知り得ているのは、元厚生事務次官の山口剛彦さんと妻の美知子さんが殺害されたこと。同じく元厚生事務次官吉原健二さんの妻・靖子さんが刺されて重症を負ったこと。

そして、山口さんと吉原さんには、現役時代に、現在につながる「基礎年金制度」と「後期高齢者医療制度」に関わっていたという共通点があることなどだが、元次官本人だけでなく、家族をも巻き込んでいるのも不気味だ。

私怨か、公憤か。個人による犯行なのか、組織的なものなのか。まだ見えていない。

ただ、どうにも「いやなかんじ」がある。これが「厚生行政への怨恨襲撃、連続テロ」かもしれないからだ。

「テロ」は「テロリズム」のこと。「テロリズム」とは、岩波国語辞典によれば「反対者(特に政府の要人)を暗殺するとか、国民を強権でおどすとか、暴力や恐怖によって政治上の主張を押し通そうとする態度」である。

また、「いやなかんじ」の元をたどると、テロの時代でもあった昭和初期と現在との“相似形”イメージにたどり着く。

手元にある、大内力『日本の歴史24 ファシズムへの道』(中公文庫版)をめくってみる。

昭和2(1927)年、日本で金融恐慌。
昭和4(1929)年、世界大恐慌。日本も失業地獄へ。
昭和5(1930)年、浜口雄幸首相襲撃事件。
昭和7(1932)年、井上準之助(前の蔵相)暗殺。
           團琢磨(三井総帥)暗殺。いわゆる「血盟団事件」だ。

当時と似たような社会不安の中で起きた今度の事件。「一人一殺」などという言葉が亡霊のごとく甦った、などとは思いたくもないが、うーん、やはり「いやなかんじ」が消えない。

日本の歴史〈24〉ファシズムへの道 (中公文庫)
大内 力
中央公論新社

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