碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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18年前、そして18年後の『櫻の園』

2008年11月22日 | 映画・ビデオ・映像
映画『櫻の園―さくらのその―』を見てきた。

中原俊監督の旧『櫻の園』は1990年の作品。つみきみほ、中島ひろ子、白島靖代・・・。もう18年前になるけど、今でも好きな1本だ。

同じ監督が、同名の作品を撮るってことで、てっきり市川崑監督の『犬神家の一族』みたいなリメイクかと思っていた。

リメイク版『犬神家』はちっとも感心しなかったし、市川監督はどうしてああいうものを作ったんだろうと、今も疑問だ。とはいえ、中原俊監督作品、やはり見に行ってしまうわけです。

で、まずは「リメイクではなかった」ってこと。これは、同じ原作で、同じ監督が撮った、別物の映画だ。

上映が開始されると「松竹」のCG富士山マークが出て、その次に「オスカープロモーション」のクレジットが、どどーんと入ったから驚いた。「あ、そーなんだ」って感じ。“オスカープロの映画”なのだ、これは。

映画初出演にして初主演の福田沙紀はもちろん、米倉涼子、菊川怜、それに上戸彩まで、大事な役は<オスカー女優>の独占だ。まあ、「製作」の筆頭、つまり大きな資金を出してるんだから当然なんだけど、こうも“自社製品”が並ぶと、ちょっと引きます。

前述のように、物語は、原作をベースにしながら、また90年版も意識しながら、様々なアレンジを行い、オリジナリティを出そうとしていた。了解です。

福田沙紀も健闘。よく頑張りました。でも、彼女を見ていると、どうしてもドラマ『ライフ』でのイメージが甦る。あの「北乃きいをイジメる女子高生」は、それだけ強烈、かつハマリ役だったってことだ。

見ている間から強い印象を与えた出演者は、杏(あん)。ファッションモデルとして知られているが、ここでは立派な女優だ。

画面の中で、黙っていても、しゃべっていても、堂々たる存在感。ちゃんとオーラがある。確か、俳優・渡辺謙の娘だったと思う。後は、これまたオスカー所属、武井咲(14歳)の美少女ぶりも目立った。

映画の中の桜はきれいだった。もっと狂おしいのが桜という気もするけど。“少女の時間”もまた桜の花と同じように、短いからこそ、かけがえのないものなのかもしれない。

そう。中原監督の旧『櫻の園』(脚本・じんのひろあき)には、少女たちの狂おしさが描かれていたように思うのだ。

映画館からの帰り道、懐かしいニュー・センチュリー・プロデューサーズ制作による90年版を、すごく見たくなった。

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