碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

秋学期、始まる

2011年10月04日 | 大学

秋学期が本格的に始まった。

夏休み中、静かだったキャンパスも、また賑やかになった。

私の授業では、「テレビ制作Ⅱb」に続いて、「テレビ制作Ⅰb」もスタートしました。



春学期に「Ⅱa」や「Ⅰb」を履修していたメンバーが、この秋もたくさん参集しており、よりレベルアップした映像制作を目指す予定。

どんなオリジナル作品が生まれるか、楽しみだ。


午後からスタジオに入りっぱなしで、ようやく外に出てみたら、見事な夕景でした。






『北海道新聞』で、「碓井広義の放送時評」連載開始 

2011年10月04日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

『北海道新聞』で、「碓井広義の放送時評」の連載が始まりました。

毎月、第1月曜の夕刊に掲載されます。


3・11以後 問われる局の姿勢
現場の意識改革急務


9月中旬、民放連は東海テレビの「不適切テロップ問題」に関する厳重注意処分を正式決定した。問題が起きたのは8月4日放送の「ぴーかんテレビ」。プレゼント当選者の氏名欄に「怪しいお米 セシウムさん」などと書かれたリハーサル用テロップが実際に流されたのだ。その後、東海テレビは検証報告書を公表し、検証番組を放送。これらを受けての民放連判断だった。

誰一人画面見ず

東海テレビの報告によれば、テロップは作成者の「思いつき」「ふざけ心」だという。しかも事前に注意を受けていたにも関わらず「修正依頼の記憶はない」と主張。結局は修正されないまま、新人タイム・キーパーの手違いで放送されてしまう。

さらに驚くのはテロップが誤表示された瞬間、スタッフのほとんどが画面を見ていなかったことだ。「利益追求型コストダウン」と呼ばれる制作費の縮小や人員削減も言い訳にはならない。

また下旬になって、BPO(放送倫理・番組向上機構)がこの問題に関して異例の「提言」を発表した。具体案として、①会社全体や各部署で「放送の使命」について話し合うこと。②制作に必要な人員や時間が確保されているかの再点検。③スタッフ間で意見交換や問題提起が出来る環境づくり。④制作者に対する研修の検討・改善・継続などが並ぶ。

ふざけ心通じぬ

しかし、これらが必要なのは東海テレビ1社だけだろうか。震災直後、日本テレビのリポーターが被災地からの中継で、「ほんっとーに面白いね」と笑っている様子が映し出された。フジテレビでは首相会見中継の最中に「ふざけんなよ、また原発の話なんだろ、どうせ」というスタッフの声が流れた。

「セシウムさん」と同様、視聴者はこうした「ふざけ心」が通用する放送局の感覚や良識を疑っているのだ。「現場の劣化」とも言うべき不祥事を頻発させてきた放送界は、各局こぞってこの提言を実施すべきだろう。

3月11日の東日本大震災を境に、私たちの社会認識も自らの生き方に対する意識も明らかに変化した。ところが、社会の最前線にいるはずのテレビだけが変わっていなかったことが今回の騒動で露呈した。

今後必要なのは不祥事が起きた際の決まり文句、「チェック態勢の強化とスタッフの放送倫理向上」だけではない。公共性と信頼性という観点からの経営方針の見直し、そして現場の意識改革である。それは東海テレビに限らない、「3・11以後」の放送界全体が担う大きな課題だ。

(北海道新聞 2011.10.03)




“企業PRビデオ”みたいだったドラマ「光る壁画」

2011年10月04日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV 見るべきものは!!」。

今週の掲載分では、テレビ朝日のドラマスペシャル「光る壁画」について書きました。


ドラマ全体が
壮大な企業CMになっていた
「光る壁画」


1日に放送されたテレビ朝日「光る壁画」。吉村昭の同名小説を原作に、「世界初の胃カメラを開発した日本人研究者たちの情熱を描く」スペシャルドラマだった。

基本的に実話であり、物語の軸となるのは試作機を作る苦労や、医師たちが受け入れるまでの技術的試行錯誤である。つまり地味な努力の連続なのだ。

ところがドラマは主人公の技術者(佐藤隆太)の戦争へのトラウマや、妻(加藤あい)との夫婦愛などサイドストーリーが強調されていた。

また、もう一人の主人公ともいうべき東大病院の若き医師(中村俊介)の描き方も中途半端だ。元々、胃ガンの早期発見を目指す彼の「発案」がなければ、胃カメラの開発自体スタートしなかった。その努力と働きをもっと描いてもよかったはずだ。

しかし、あくまでも技術者たちをドラマの中心に置かねばならなかった。なぜなら、当事者であるオリンパスの一社提供ドラマだから。

いわば自社の栄光の歴史を、自らがスポンサーになってゴールデンのドラマにしたわけで、2時間全体が壮大な企業CMだったとも言えるのだ。

これがOKなら、たとえばエコカー開発者のドラマを、自動車メーカーの一社提供で流すのもアリになる。

テレビ不況の中で今後この手のドラマが増える可能性は高い。ドラマと企業PRビデオの境が気になる。

(日刊ゲンダイ 2011.10.03)