『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「TV 見るべきものは!!」。
今週は、日本テレビの新ドラマ「妖怪人間ベム」について書きました。
アニメの実写版は「もういいよ」と思った
「妖怪人間ベム」
「妖怪人間ベム」
まんまと当てた「怪物くん」の次は「妖怪人間ベム」ときた。昔のアニメを実写化した日本テレビの新ドラマである。
アニメ版の放送は1968年から翌年にかけて。何者かが人工的に人間を生みだそうとして失敗。ベム、ベラ、ベロの3人というか3体の妖怪人間が誕生した。
このアニメを流していたのはフジテレビで、同じ時期にTBSが放送していたのが「怪物くん」だ。つまり日テレは他局の〝遺産〟で次々と商売していることになる。
ヒットアニメを実写化するメリットはタイトルを含め視聴者になじみがあること。またVFXや特殊メイクで役者の演技力をカバーできることだろう。
アニメは少年のベロが軸だったが、こちらはベム(亀梨和也)が主役である。
自分たちを迫害する人間への怒りを抱えながらも優しさを失っていないベム。亀梨はひたすら思い詰めたような表情で演じており、見ていて息苦しい。
人間嫌いの女性妖怪ベラ役の杏は「およしよ」といった〝姐(あね)さん言葉〟があまりに似合わない。
救いは「マルモのおきて」で人気になったベロ役の鈴木福(写真)の明るさだ。
過去の再利用も結構だが、モノ作りとしてはやはり寂しい。
この3人を揃えるならリメイクの妖怪物などではなく、現実社会と向き合う真っ当なドラマに挑戦してもよかったのではないか。
アニメの実写化はもういいよ。
(日刊ゲンダイ2011.10.24)