2019年03月22日
http://karapaia.com
[マグロ6尾に1尾はインドネシア産]
マグロ漁獲国世界一のインドネシア。その半分がアメリカ、4分の1が日本へ。
インドネシアは世界最大のマグロ漁獲量を誇り、年の漁獲高は5500億円と推定されている。ここ3年でいえば、世界で食べられるマグロ6尾に1尾はインドネシア産で、昨年の世界のマグロ漁獲量に占める割合は16パーセントだった。その最大の市場がアメリカだ。昨年、ここではインドネシア産マグロの半分近くが消費されており(ほとんどは1尾あるいは切り身の冷凍)、2014年以降130パーセントの伸びたという。さらに4分の1が世界に寿司を広めた日本へ。残りはオーストラリア、香港、シンガポール、韓国へと輸出される。先日開催された北米最大の水産専門見本市「シーフード・エキスポ・ノース・アメリカ2019」では、20社ほどのインドネシア水産企業が参加し、今後の見通しや、漁獲量の減少、乱獲、海洋の環境破壊といった問題点などについて語られた。今、世界では、自分たちの食卓にのぼる魚がどこで、どのように獲られたのかについて、消費者たちの関心が高まっている。求められているのは、責任ある漁業によって得られた海産物なのである。ここ数年、インドネシアは、顧客を安心させるために、海産物のサプライチェーンをより透明なものにしようと取り組んできた。たとえば同セクターには3300万人が従事していると推定されているが、これまで業界は低所得の仕事、人身売買、違法操業といったイメージと戦ってきた。またスシ・プジアストゥティ海洋水産大臣の指示によって、インドネシアは世界に先駆け、領海内にある全船舶の位置データをリアルタイムで公開。これによって、漁業の透明性という点において世界でもっとも進んだ国となった。さらに違法操業に対しては厳しい態度をとり、これまで逮捕した外国漁船数百隻を派手に爆破しては、海に沈めてきた。これらの政策は、インドネシアの水産業が透明であるという評価を高めることにつながかねてからインドネシアの漁船は、マグロの群れごと水揚げできる大きな漁網を利用してきた。日本や台湾といった世界有数のマグロ生産者に匹敵する漁獲量を実現しているのは、このたまものだ。だが、きんちゃく網による漁法は、一帯の魚が生息数を回復できないほど獲りすぎてしまう恐れがある。ところが近年では、インドネシアはマグロの一本釣りでも日本に次いで2位にまで成長している。これは1人が1尾を釣り上げる漁法であるために、意図しない魚を水揚げしてしまうようなこともない。専門家によれば、インドネシア産マグロのおよそ2割が、こうした環境にやさしい漁法によって漁獲されているという。事実、昨年11月には、シトララジャ・アンパット・カニング社(漁師750名、釣竿35本を擁する)が、インドネシア第1位、東南アジアでも第2位(1位はベトナムの企業)の水産企業となり、世界でももっとも厳しいとされる海洋管理協議会から持続可能な漁業を行なっていることを示す認証を獲得した。目下火花を散らしているアメリカと中国との貿易戦争では、マグロも俎上に載せられている。中国からアメリカに輸入されるマグロには、10パーセントの関税が課せられているのだ。アメリカは国内で消費される海産物の8割を輸入している一方、その多くがじつは国内で漁獲されたものだ。ところがアメリカ国内で漁獲された海産物は、加工のために一旦中国に輸出され、再度輸入される。そのためにせっかく魚を自国内で獲っておきながら、関税の対象となっているのだ。100年の歴史を持つアメリカのツナ缶製造企業バンブル・ビー・シーフード社もまた、太平洋西部で獲られ、中国で加工されたマグロを米国内で缶詰にするために関税を払ってきた。一方で、ここ20年、アメリカ国内のツナ缶の消費量はゆっくりと減少。かわりに新鮮なマグロが好まれるようになっている。こうした好みの変化によって、インドネシアで漁獲・加工された刺身用のマグロのみを扱う企業など、アメリカでは新鮮なマグロ専門の企業が生まれている。今月初め、バンブル・ビー・シーフード社は、貿易戦争のあおりを受け、カリフォルニア州の缶詰工場を閉鎖し、東南アジアに移転させることを検討していると発表した。加工の生産性がうなぎのぼりで、透明性への投資も惜しまれないインドネシアは、その有力な移転候補地となるだろう。
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[マグロ6尾に1尾はインドネシア産]
マグロ漁獲国世界一のインドネシア。その半分がアメリカ、4分の1が日本へ。
インドネシアは世界最大のマグロ漁獲量を誇り、年の漁獲高は5500億円と推定されている。ここ3年でいえば、世界で食べられるマグロ6尾に1尾はインドネシア産で、昨年の世界のマグロ漁獲量に占める割合は16パーセントだった。その最大の市場がアメリカだ。昨年、ここではインドネシア産マグロの半分近くが消費されており(ほとんどは1尾あるいは切り身の冷凍)、2014年以降130パーセントの伸びたという。さらに4分の1が世界に寿司を広めた日本へ。残りはオーストラリア、香港、シンガポール、韓国へと輸出される。先日開催された北米最大の水産専門見本市「シーフード・エキスポ・ノース・アメリカ2019」では、20社ほどのインドネシア水産企業が参加し、今後の見通しや、漁獲量の減少、乱獲、海洋の環境破壊といった問題点などについて語られた。今、世界では、自分たちの食卓にのぼる魚がどこで、どのように獲られたのかについて、消費者たちの関心が高まっている。求められているのは、責任ある漁業によって得られた海産物なのである。ここ数年、インドネシアは、顧客を安心させるために、海産物のサプライチェーンをより透明なものにしようと取り組んできた。たとえば同セクターには3300万人が従事していると推定されているが、これまで業界は低所得の仕事、人身売買、違法操業といったイメージと戦ってきた。またスシ・プジアストゥティ海洋水産大臣の指示によって、インドネシアは世界に先駆け、領海内にある全船舶の位置データをリアルタイムで公開。これによって、漁業の透明性という点において世界でもっとも進んだ国となった。さらに違法操業に対しては厳しい態度をとり、これまで逮捕した外国漁船数百隻を派手に爆破しては、海に沈めてきた。これらの政策は、インドネシアの水産業が透明であるという評価を高めることにつながかねてからインドネシアの漁船は、マグロの群れごと水揚げできる大きな漁網を利用してきた。日本や台湾といった世界有数のマグロ生産者に匹敵する漁獲量を実現しているのは、このたまものだ。だが、きんちゃく網による漁法は、一帯の魚が生息数を回復できないほど獲りすぎてしまう恐れがある。ところが近年では、インドネシアはマグロの一本釣りでも日本に次いで2位にまで成長している。これは1人が1尾を釣り上げる漁法であるために、意図しない魚を水揚げしてしまうようなこともない。専門家によれば、インドネシア産マグロのおよそ2割が、こうした環境にやさしい漁法によって漁獲されているという。事実、昨年11月には、シトララジャ・アンパット・カニング社(漁師750名、釣竿35本を擁する)が、インドネシア第1位、東南アジアでも第2位(1位はベトナムの企業)の水産企業となり、世界でももっとも厳しいとされる海洋管理協議会から持続可能な漁業を行なっていることを示す認証を獲得した。目下火花を散らしているアメリカと中国との貿易戦争では、マグロも俎上に載せられている。中国からアメリカに輸入されるマグロには、10パーセントの関税が課せられているのだ。アメリカは国内で消費される海産物の8割を輸入している一方、その多くがじつは国内で漁獲されたものだ。ところがアメリカ国内で漁獲された海産物は、加工のために一旦中国に輸出され、再度輸入される。そのためにせっかく魚を自国内で獲っておきながら、関税の対象となっているのだ。100年の歴史を持つアメリカのツナ缶製造企業バンブル・ビー・シーフード社もまた、太平洋西部で獲られ、中国で加工されたマグロを米国内で缶詰にするために関税を払ってきた。一方で、ここ20年、アメリカ国内のツナ缶の消費量はゆっくりと減少。かわりに新鮮なマグロが好まれるようになっている。こうした好みの変化によって、インドネシアで漁獲・加工された刺身用のマグロのみを扱う企業など、アメリカでは新鮮なマグロ専門の企業が生まれている。今月初め、バンブル・ビー・シーフード社は、貿易戦争のあおりを受け、カリフォルニア州の缶詰工場を閉鎖し、東南アジアに移転させることを検討していると発表した。加工の生産性がうなぎのぼりで、透明性への投資も惜しまれないインドネシアは、その有力な移転候補地となるだろう。