2020年01月10日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[欧州理事会議長 英国EU離脱 英国水域操業を認めなければ”タラ戦争”の二の舞]
欧州理事会議長Charles Michelは、2020年1月9日の記者会見で、英国がEU離脱後、EU漁船の自国水域へのアクセスを拒否した場合、*”タラ戦争”(Cod Wars)と同様の紛争が勃発する可能性があると警告した。
EUは貿易協定の条件として英国水域への継続的なアクセスを要求しているが、英国首相Boris Johnsonは、EUを離脱する時、自国がその水域の管理を取り戻すと言及している。
Charles Michelは、大西洋での漁業紛争は、どうしても回避する必要があると、記者会見で加えた。
*タラ戦争(Cod Wars)
1958年から1976年にかけて起きたアイスランドと主に英国との間の一連の紛争。アイスランドが主張する漁業専管水域における漁業権を争った。当該漁場の主たる漁獲対象物がタラであったため、この名が付いた。
タラ戦争はアイスランドが領海の拡大を宣言することから始まった。英国海軍は軍艦を出動させ、アイスランドの沿岸警備隊と互いに砲撃、体当たり攻撃といった激しい衝突を起こし、一時は国交断絶にまで至った。冷戦の英語名”Cold War”をもじった”Cod War”という呼称が流布された。
奇跡的に死者は出なかったものの、国際司法裁判所の仲介を経ても事態は解決しなかった。しかし最終的に英国はアイスランドに対して大幅な妥協案を結び、タラ戦争はアイスランドの勝利で終結した。アイスランドはワシントンD.C.とモスクワを結ぶ最短直線経路の真下に位置しており、英国を含む西側諸国のソビエト連邦に対する最重要拠点だったケフラヴィークのNATO基地閉鎖をアイスランド側がほのめかしたことや、200海里の排他的経済水域が世界的な慣習になりつつあったことが勝利の原因となった。
背景
アイスランドは資源に乏しい国であり、長期間にわたるデンマークの支配も重なってヨーロッパの最貧国の地位にあった。しかし、1901年に英国からトロール船を導入した結果、豊富なタラ等の水産資源で巨額の富を蓄えていった。第二次世界大戦中、ヨーロッパの漁船が軍隊に徴発されている間、アメリカ合衆国の保護の下でアイスランドは魚をヨーロッパ中に提供し続けた。1944年の独立後も近海のタラ漁業はアイスランドの一大産業であり生命線とも言えるものだった。しかし、戦争の終結により、大幅に改装されたヨーロッパの大型トロール漁船がアイスランド近海で操業を行ったため、水産資源は減少しはじめた。1945年、トルーマン米大統領が「大陸棚の資源は沿岸国が管理で きる」と宣言(トルーマン宣言)した。当時は漁師にとって海は自由なものであるという「公海自由の原則」が一般的だったため、これは画期的なことだった。これを機にアイスランドは自国資源保護のための管理に乗り出した。
第一次タラ戦争
1958年、アイスランドは自国の領海を4海里から12海里へと拡大する新法を制定した。これに対し英国はアイスランドの主張を認めず軍艦を派遣して操業を継続。沿岸警備隊との間で小規模な小競り合いを起こした。
NATOの調整や、アイスランドで政権交代が起こったこともあり、1961年2月、英国は12海里を承認。両国間に領海紛争が生じた際は、いずれか一方の要請により国際司法裁判所へ問題を付託するという交換公文を締結した。
第二次タラ戦争
1972年、再び政権交代を起こしたアイスランド政府は自国の漁業専管水域を50海里へと拡大する新法を制定した。主張された海域で操業していた英国と西ドイツは国際司法裁判所へ提訴。判決により英国側の主張は認められたが、アイスランドは先の交換公文自体が無効であると主張、裁判を欠席しこれに従わなかった。英国は再び漁船保護のために軍艦を送り出す。
アイスランド沿岸警備隊はこの時から、トロール漁船の網を鉤で引っ掛けて切断してしまう悪名高い”ネットカッター”を使用し始めた。第二次タラ戦争終結までに84隻のトロール漁船が網を切断されている。英国側はこれに対抗するため大型の高速タグボートによって漁船を護衛したが、これが沿岸警備隊との体当たり合戦に発展する。1973年1月、ヘイマエイ島のエルト火山が噴火。沿岸警備隊は救助に向かったため、トロール漁船は自由に操業することができたが、それも束の間のことだった。警備隊の砲撃を英国のタグボートが受けたり、砲撃によって英国漁船が破壊されることもあれば、アイスランドの灯台船や警備船に英国艦隊が砲撃することもあった。
アイスランド政府は、NATOの英国戦闘機を管制空域から締め出して国交を断絶するとほのめかした。9月16日にNATOの将軍がレイキャヴィークで交渉にあたった結果、10月に英国艦隊はすべて本国に帰還した。
1973年11月8日、アイスランドは英国漁船が50海里内の一部の水域でのみ操業することを認める協定を結び、第二次タラ戦争は終結した。これには英国の年間漁獲量を13万トンまでに制限することが前提であり、また1975年11月までの暫定的なものだった。
同年、英国は欧州自由貿易連合(EFTA)を脱退し欧州経済共同体(EEC)に加盟しているが、この紛争に非協力的だったのが一因とも言われている。
第三次タラ戦争
度重なる制限にもかかわらず、アイスランド近海の水産資源は回復傾向を見せず、1975年10月、アイスランドは自国の漁業専管水域を200海里へと拡大する新法を制定した。先の協定が期限満了を迎えた11月13日、両国の間でふたたび武力衝突が起こる。軍艦と警備艇同士の衝突はこれまでで最も激しかったが、やはり奇跡的に死者は出なかった。
1976年2月19日には遂にアイスランドは英国と国交断絶するに至る。NATO加盟国同士の国交断絶はこれが初の事例だった。一方で同月、EECは英国の主張に反してヨーロッパ全域に200海里排他的経済水域を設定することを決定。英国は梯子をはずされた形となる。
NATOの交渉により、同年6月1日、アイスランドの200海里内では、英国漁船は最大24隻まで操業可能、かつ年間の漁獲量は5万トンまでとする協定に両国が合意。翌2日に協定が発効し、両国の断絶関係も終了。一連の紛争は終結した。
その後
この大幅な妥協による解決は英国漁業に大きな打撃を与え、1500人の漁師と、7500人の漁業関係者が解雇された。また、英国はフランスとの中間線を巡る裁判(英仏大陸棚事件)にも敗れ、フォークランド戦争で勝利するまで国民は長らく自信喪失の状態となった。
一方、勝利したにもかかわらずアイスランドでのタラ資源は大きな回復を見せなかった。現在でもカナダ沿岸を含む北大西洋のタラ漁船には、過去の漁獲量に応じて漁獲割り当てが決まるという強い制限がかけられている。この割当システムは、漁業者が超過を免れるため一度水揚げして死んだ魚を海に投棄する行為を引き起こしていると非難されている。
なお、アイスランドの主張が認められたことを機に、世界各国は200海里排他的経済水域を設定した。
2020年01月10日
日本経済新聞【ロンドン=篠崎健太】
[英下院、EU離脱法案を可決 1月末に実現へ]
英議会下院は9日午後(日本時間10日未明)、英国が欧州連合(EU)から離脱するための関連法案を賛成多数で可決した。近く上院でも承認され成立する見通しだ。2016年6月の国民投票から3年半の迷走を経て、20年1月末の離脱実現が固まった。EUから加盟国が抜けるのは初めてとなり、2度の大戦後に進んできた欧州の統合は大きな転機を迎える。
離脱関連法案は、英政府とEUが2019年10月にまとめた新たな協定案に基づく離脱を、国内法に反映して実行するためのものだ。ジョンソン首相率いる与党・保守党が12月の下院総選挙(定数650)で過半数議席を制する大勝を果たし、可決は確実視されていた。採決結果は賛成330、反対231だった。
欧州議会も月内に離脱協定案を承認する見込みで、英・EU双方の批准を経て、英国は1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)にEUから抜ける。ただ、EUを離脱しても20年末までは通商や規制などの面ではEU加盟国と同じ環境が維持される。経済の激変を避ける「移行期間」を設けたためだ。
1月末の円滑な離脱に道筋がついたことで、焦点は離脱後の英・EU関係の行方に移る。英国側は2月から交渉に着手し、関税ゼロの通商関係を続ける自由貿易協定(FTA)を速やかに結びたい考え。日本や米国ともFTA交渉を急ぐ方針だが、通常は少なくとも数年かかるFTA交渉を移行期間内に妥結するハードルは高い。
ジョンソン政権は移行期間を予定通り20年末で終えると宣言し、離脱関連法案にもその延長禁止を明記した。通商交渉を妥結できないまま移行期間終了を迎えれば、世界貿易機関(WTO)ルールに基づいてEUなどとの貿易に関税が出現し「合意なき離脱」と同じ状況に陥りかねない。
EUのバルニエ首席交渉官は9日、英下院の採決に先立つ講演で「11カ月で最善を尽くす用意があるがもっと時間が必要だ」と述べた。「1年足らずで全ての面に合意できるとは思えない」とも指摘し、優先順位を付けて交渉する必要があるとの認識を示した。
英国は16年6月23日の国民投票でEU離脱の是非を問い、離脱52%対残留48%の僅差で離脱が選ばれた。メイ前政権は18年11月にEUと離脱案をまとめたが、英下院で19年1~3月に計3回否決された。EU加盟国アイルランドとの国境の取り扱いをめぐり、解決策が見つかるまでEUから事実上抜けられない内容に、与党の強硬離脱派が反発したためだ。
EU離脱は当初予定の19年3月29日から繰り返し延期された。引責辞任したメイ氏から首相を引き継いだジョンソン氏は、英領北アイルランドだけEU単一市場に部分的にとどまるなどの解決策を盛り込んだ新離脱案をEUと合意した。総選挙で保守党が大勝を果たし、訴え続けてきた早期離脱に道筋を付けた。
英国がEU加盟国として恩恵を受けてきた通商環境を維持できるかは、今後の交渉次第となる。グローバル企業が欧州の拠点を構え、国際金融センターでもあるロンドンは離脱後も地位を保てるか。EUとの窓口としての存在感を発揮してきた英国の国力の長期的な行方は見通せない。
2020年01月10日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[メドヴェージェフ 気候変動への適応国家行動計画を承認]
ロシア首相メドヴェージェフは2019年12月25日付No.3183-rにより、2022年までの気候変動に適応するための国家としての行動計画の第1段階を承認した。
承認された計画は、経済と人口を気候変動に適応させるための対策の第1段階で、制度、組織および方法論等の対策を含んでいる。
これに基づいて、国家計画活動実施に責任を負う執行機関は、気候変動への部門別適応計画が求められている。
ロシア漁業庁は、関係省庁とも連携し、2021年第3四半期までに、漁業部門の気候変動に対する適応計画を策定することになる。