2022年04月12日 北海道新聞(佐々木馨斗)
[日ロ サケ・マス漁業交渉11日から開始 妥結不透明]
水産庁は2022年4月11日、ロシアの川で生まれたサケ・マスに関するロシア政府との漁業交渉を開始した。根室などの漁船が出漁する日本200カイリ水域内におけるサケ・マス流し網漁の漁獲枠や、ロシア側に支払う漁業協力費などの操業条件を協議する。交渉は例年3月に始まることが多いが、今年はロシアによるウクライナ侵攻を受けて日程調整が大幅に遅れていた。日米欧がロシアに経済制裁で圧力をかけている中、交渉が順調にまとまるかは不透明だ。
交渉はオンラインによるテレビ会議で開催。交渉期間は未定。今年はウクライナ侵攻の影響で日程調整さえ進まず、出漁を予定する根室や釧路管内厚岸町など道内の小型船19隻は今月10日の解禁日を過ぎても出漁できずにいる。交渉が早期に妥結し、サケ・マス漁の盛漁期である4月下旬~5月初旬に出漁できるかが焦点となる。
日本は他の先進7カ国(G7)と協調してロシアへの経済制裁に踏み切り、ロシアは日本を「非友好国」に指定している。さらに日本政府は8日、ロシア産石炭の段階的な輸入削減を決め、在日ロシア大使館の外交官ら8人に国外退去を求めた。両国関係は一層冷え込んでおり、交渉の行方は予断を許さない。
近年は地球温暖化の影響などでサケが不漁で、ロシアに払う協力費(昨年は漁獲枠2050トンに対し2億6千万円)の1隻当たりの負担も増している。
政府関係者によると、今回の交渉で、日本側は協力費を2億円程度に引き下げることを求める方針で、ロシア側が受け入れない場合は交渉が決裂する可能性もある。
流し網漁の漁期は4月10日~7月7日。道知事許可の漁業だが、両国の交渉で操業条件が決まらないと出漁できない。例年は同時に行っている、ロシアの200カイリ水域における日本漁船の漁獲枠を決める政府間交渉の日程は引き続き調整する。
<ことば>日ロ間のサケ・マス漁業交渉 1985年の日ソ漁業協力協定に基づき、日本とロシア両国の排他的経済水域(EEZ)である200カイリ内でのサケ・マスの漁獲に関する操業条件を決める政府間交渉。サケ・マスは産卵した川のある国に基本的な所有権がある「母川国主義」をとっており、日ロ両国で毎年漁獲量などを決める。大半がロシアの川で生まれたサケ・マスを漁獲するため、日本漁船は日本のEEZ内での漁獲であっても、漁業協力費を支払っている。ロシアのEEZ内では、2016年から「流し網漁」が禁止され、日本漁船は「引き網漁」の試験操業を行っている。