内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

フランス語の俳句

2015-12-30 02:53:47 | 読游摘録

 学生たちが俳句についての展示会を来年二月上旬の大学図書館主催「日本文化週間」のために準備していることは、十二月七日の記事で話題にした。彼らが作成するパネルの原稿の締め切りが一月五日である。提出前に私がその内容を確認し、場合によっては修正し、その上で原稿を図書館の担当者に送ることになっている。十二月半ばに学期末試験が終わってから、そして本格的にはおそらくクリスマスが終わってから、原稿作成にとりかかったのであろう。数日前から原稿が届き始めている。仕上がりにはばらつきがあるが、まったく授業外のプログラムのために休暇中に時間を割いてよくやってくれていると思う。
 今回の展示では、日本の俳諧史・俳句史の解説と代表的な俳人とその何句かの紹介とに内容を限定しているが、フランスにおけるフランス語の「俳句」(« haïku » と綴る)について調べてみるのも、別のテーマとして面白そうである。
 その手掛かりとなりそうな一冊が、Le Livre de Poche から二〇一〇年に刊行された L’Art du haïku. Pouer une philosophie de l’instant という本である(初版は前年に別の出版社から刊行されている)。著者名として Bashô, Issa, Shiki とあり、翻訳者と解説の筆者として Vincent Brochard という名前が、序文の筆者として Pascale Senk という名前が、それぞれ見開き第一頁に掲げてある。
 全部で二四十頁ほどの小著ではあるが、なかなか興味深い構成になっている。まず、全体の六分の一強を占める序文の中で、心理学者で仏語俳句の実践者である筆者が、自らの俳句との出会いとその実践について語り、他のフランス人俳人たちの紹介と仏語俳句を多数引用しつつ、俳句の要諦を示そうとしている。この序文の補遺として、フランス俳句協会(現在では、フランス語圏俳句協会 Association Francophone de Haïku と改称されている)などいくつかの仏語俳句サークルのアドレス、俳句に関する若干の仏語サイトと多数の英語サイトの URL が挙げてある。それに続く百ページ余りの主要部分は、俳句の翻訳者である筆者による俳諧と俳句についての解説である。その後ろに芭蕉、一茶、子規を主にした、六十頁余りの俳句集が置かれ、さらにこの三俳人の短い伝記的紹介が続き、用語集と文献表によって締め括られている。
 本書の特徴は、序文の筆者も翻訳・解説者も、俳句の実践を一つの生きる技として捉えているところにある。明日の記事では、序文から少し引用しつつ、その内容の一部を紹介しよう。