糸車
いつも外から
眺めていた
機織り工場(こうば)
小さな工場
カタカタと音を出して
紡ぐ糸の
図柄までの行き道
図柄をほどき
また糸車に戻る
糸
そのような
永劫回帰を
藤井貞和さんの
詩集「人間のシンャWウム」の中の
最後の詩
「輪廻 縺れた糸を解く呪歌」「糸車」という詩は
言っているのだろうか
ともかく
この写真に撮った
糸車の前を通るたび
僕は藤井貞和の詩を
思い出す
また図書館で
借りて
読みたい
と思う
糸車
ここらは
繊維の町で
氏神さまも
機織りのかみさまです
古い朽ち果てそうな
民家の大部屋に
繊維工
糸車がある
宇宙の先に
糸車があったら
そこから紡ぐ
森羅万象
人の心まで
宇宙の先の
糸車から
カタカタと音を出して
わたしたち
図柄で生きている
いつかほどけて
糸車に帰る
織る人は誰?
繊維工
あなたは誰の羽織物
いえいえ
誰の物でもありません
糸車から
カタカタと音を出して
紡がれるだけ
ただ紡がれるだけ
ほどけては
また紡ぐだけ
見えぬ糸が天空を
ゆらゆらと
ほら
またあなたの心
繋いだ
きれいな絵柄ができるまで
紡いでほどいて
紡いでほどいて
カタカタと
音を出す
糸車