今日で
54歳になったというのに
相変わらず
正確な歳が言えず
前後でごまかす
54歳
と覚えておくには
5、4のカブ
と覚え
世の中が
大変を迎えているというのに
変わらず
誕生日をプライベートとして迎え
ケーキとか大福とか
お祝いの言葉までもらっているのに
いつの時と同じく
淡々としている
朝の空は
うろこ雲
東京で地震が早朝にあり
新聞では
詩人の伊藤比呂美が
石垣りんをまともに読んだ
と書いてあり
今まで
伊藤比呂美が
ほぼ石垣りんを未読であったという
ことに
驚く
そんなことがあるのか
と
つまり
見過ごすという
ことが
先鋭な詩人であっても
起こり得るという事実
ならば
わたし
もっと
多くを
見逃してきているに
違いない
間に合うだろうか
あの図書館の本のどれだけを
人々は読めるのだろうか
天井裏に住んでいた
小窓があって
イチジクの木があった
宮田織物の寮
チョコボール
吉増剛造の詩集
『裸のメモ』を
卓をまたいで
手渡すと
箸はとまり
天ぷらや刺身は
意外に放り出される
この詩集は
無人島に持っていける
何が書かれてあるか
まったくわからないのに
混沌だとか
前衛だとか
詩であるとか
そんな社会通念の語彙とは
ほぼ
無関係に
存在する
「言葉の海」
または
「海の言葉」
海流や深海魚
魚の腹に光る
海面の光
夜の月や太陽
海水温の変化
地殻変動に準ずる
生物たち
波の音
船の油
海藻に
サンゴ
台風が生まれる時の
海中で起きている
生物たちの生態
凍る北極の海
灼熱の砂浜
新たな微生物の目覚め
海流のぶつかり
もちろん
海に降る雨
秋刀魚
鰯
鯖の
稚魚たちの群
食物連鎖の真っただ中
今日 生きる生命
そこに差し込む
太陽
揺れ動く海流
そういう海のすべて
この『裸のメモ』に
書かれてあるように
思う
吉増剛造という詩人
もう一人
霊性を帯びた
藤井貞和の言葉
この二人の詩人の口から
発される共通の人物名
それは
折口信夫
54歳になったというのに
相変わらず
正確な歳が言えず
前後でごまかす
54歳
と覚えておくには
5、4のカブ
と覚え
世の中が
大変を迎えているというのに
変わらず
誕生日をプライベートとして迎え
ケーキとか大福とか
お祝いの言葉までもらっているのに
いつの時と同じく
淡々としている
朝の空は
うろこ雲
東京で地震が早朝にあり
新聞では
詩人の伊藤比呂美が
石垣りんをまともに読んだ
と書いてあり
今まで
伊藤比呂美が
ほぼ石垣りんを未読であったという
ことに
驚く
そんなことがあるのか
と
つまり
見過ごすという
ことが
先鋭な詩人であっても
起こり得るという事実
ならば
わたし
もっと
多くを
見逃してきているに
違いない
間に合うだろうか
あの図書館の本のどれだけを
人々は読めるのだろうか
天井裏に住んでいた
小窓があって
イチジクの木があった
宮田織物の寮
チョコボール
吉増剛造の詩集
『裸のメモ』を
卓をまたいで
手渡すと
箸はとまり
天ぷらや刺身は
意外に放り出される
この詩集は
無人島に持っていける
何が書かれてあるか
まったくわからないのに
混沌だとか
前衛だとか
詩であるとか
そんな社会通念の語彙とは
ほぼ
無関係に
存在する
「言葉の海」
または
「海の言葉」
海流や深海魚
魚の腹に光る
海面の光
夜の月や太陽
海水温の変化
地殻変動に準ずる
生物たち
波の音
船の油
海藻に
サンゴ
台風が生まれる時の
海中で起きている
生物たちの生態
凍る北極の海
灼熱の砂浜
新たな微生物の目覚め
海流のぶつかり
もちろん
海に降る雨
秋刀魚
鰯
鯖の
稚魚たちの群
食物連鎖の真っただ中
今日 生きる生命
そこに差し込む
太陽
揺れ動く海流
そういう海のすべて
この『裸のメモ』に
書かれてあるように
思う
吉増剛造という詩人
もう一人
霊性を帯びた
藤井貞和の言葉
この二人の詩人の口から
発される共通の人物名
それは
折口信夫